2024年6月18日(火)21:30発表(日本時間)
米国 小売売上高

【1】結果:市場予想を下回り、消費の減速を示す

小売売上高(前月比)
結果:0.1% 予想0.3%
前回:-0.2%(速報値0.0%から下方修正)

自動車・同部品除く小売売上高(前月比)
結果:-0.1% 予想0.2%
前回-0.1%(速報値0.2%から下方修正)

コア小売売上高(自動車、ガソリン、外食、建設資材除く小売売上高・前月比)
結果:0.4% 予想:0.5%
前回-0.5%(速報値-0.3%から下方修正)

【図表1】米国小売売上高の推移
出所:米商務省、Bloombergよりマネックス証券作成

米国では、個人消費がGDPの約7割を占めることから、その動向を確認できる小売売上高に注目が集まります。そして今回5月の結果は、+0.1%と前月から小幅に増加となりましたが、市場予想は下回っており、過去2ヶ月分も下方修正されました。

米国の個人消費は2月、3月と力強い伸びを見せていましたが、ここに来てその勢いに鈍化が見られます。

また、自動車は販売店のセールなどの影響で月ごとに大きく販売量が変わるため、それを除いた数値に注目が集まりますが、その数値も市場予想の+0.2%に対して、結果は-0.1%と大きく下回りました。

その他、GDPの算出に間接的に用いられるコントロール・グループ(季節変動の大きい自動車、ガソリン、外食、建設資材除いたコア小売売上高)は、前月比+0.4%と増加しているものの、前月の0.5%減のマイナスを相殺するに至らず、米個人消費が基調的に鈍化傾向にあることが分かります。

【2】内容・注目点:目立つガソリンスタンドの売上減少。その他、唯一のサービス分野である外食が減少

【図表2】品目別小売売上高(前月比)
出所:米商務省、Bloombergよりマネックス証券作成

次に図表2の通り品目別にみると、5月は13項目のうち8品目で増加しました。内訳をみると、スポーツ用品等趣味が増加を牽引した他、衣服や自動車・部品、無店舗小売(主にオンライン)などが支えました。

一方で、下落で目立つのはガソリンスタンド(-2.2%)です。5月のCPIPPIでも示されている通り、ガソリン価格が下落しており、その影響による売上減少でしょう。夏場のドライブシーズンに向けて、一般的にガソリン需要が高まり価格は上昇する傾向にあるため今後の推移にも注目です。

その他、家具や建設資材・園芸といった比較的高価格帯の品目が減少した他、唯一のサービス分野である外食が減少しました。

【3】所感:消費の減少は利下げ後押しも落ち込みすぎには注意、月末の個人消費支出にも注目

インフレ退治を掲げる米連邦準備制度理事会(FRB)は、多少の経済へのダメージを犠牲にしても高い政策金利水準を維持しています。今回、小売売上高が落ち込んだことは、需要の低下から価格の低下に繋がると考えられるため、利下げ開始の判断を後押しするという意味では好材料といえます。
 
とはいえ、経済にとって消費の落ち込みは本来悪いことであり、落ち込みすぎると景気後退を招くため注意が必要です。

5月はメモリアルデーの3連休があったにもかかわらず、消費がこれほど落ち込んでいるという状況は、長引くインフレと高金利で家計が逼迫しつつあることを示唆しています。

一方で、米国の個人消費の大半はサービスが占めていますが、小売売上高データでは旅行や宿泊などの項目を除外しており、消費者支出を部分的にしか把握していません。小売売上高データのなかで唯一のサービス分野である外食が減少しているため、全体的なサービス支出も低下していることがうかがえますが、月末(6月28日)に発表される予定の米個人消費支出(PCE)で全体的な個人消費の動向も確認する必要があります。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐