2024年6月5日(水)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2024年4月
【1】結果:実質賃金はマイナスも基本給が大幅上昇
2024年4月の名目賃金、実質賃金は市場予想を上回る結果となりました。実質賃金は、25ヶ月連続の前年比マイナスとなりました。しかし、内訳をみると名目賃金が上昇する一方で、算出に用いられる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が低下したことから、前回2024年3月比でマイナス幅を1.4%ポイント改善しています。
基本給とされる所定内給与は前年比2.3%と1994年10月以来、29年6ヶ月ぶりの高水準となりました(図表1)。同じサンプルデータである、共通事業所ベースの所定内給与も前年比2.1%増で、8ヶ月連続で2%以上の結果となりました。次回、5月分速報値は7月8日発表予定です。
【2】内容・注目点:コストプッシュインフレ懸念、6月10日週発表の輸入物価に注目
実質ベースでは、依然として前年比マイナスで推移していますが基本給が着実に上昇していることが確認できる内容となりました。春闘の好結果を受け、賃金の反映が少しずつ見られ始めたと考えられますが、本格的にデータに現れるのは7月から夏ごろにかけてとされています。そのため、賃金動向については向こう数ヶ月のデータを確認する必要があるでしょう。
足元ではエネルギーなどのコストプッシュによるインフレ懸念が再燃していることから、先行きの実質賃金を下押しする可能性があることなどを考えられます。先行きのインフレのパスとして、来週6月12日に発表される企業物価指数にて、円ベースの輸入物価指数の上昇が続いているかに注目が集まるでしょう。
【3】所感:先行きはインフレ懸念があるも、趨勢は変わりつつある
実質賃金のプラス転換は夏以降がメインシナリオですが、上述の通りコストプッシュインフレはそれを妨げるリスクと考えられます。実質ベースで、短期的な下振れ可能性が燻る中、日銀が賃金データを以て、政策変更を実施する可能性は低いでしょう。
一方で、中長期的には(インフレがターゲット周辺で安定推移していくことを前提に)賃金は上昇していくものと考えられます。理由は企業のマインドが変化している点が挙げられます。5月に日銀より発表されたさくらレポート内の資料「物価や賃金に関する企業向けのアンケート」は、賃上げに関するアンケートで、賃上げ動向ついて企業のマインドがうかがえます(図表4)。
物価やムードといった外部要因と人出不足の内部要因を示すもので、内外から賃上げの必要性があり、企業は課題として感じているものと判断できます。内部要因はすぐには改善されない要因であるため、中長期的な賃上げ機運は続くでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太