今後の市場のリスク要因とは
約1ヶ月、日経平均は38,000円前後~39,500円の狭い範囲で一進一退の推移が続いています。しかし、種々の悪材料が株価の蓋となっている中、それでも底割れしていないのは、むしろ底堅いと捉えています。好決算企業などには、しっかり株価が反応している状況から、市場は銘柄選別を進める段階に移行してきたと位置づけたいところです。そのような中、私はリスク要因として金利動向に注目しています。長期金利は1.1%に達し、その上昇ペースはかなり速い状況です。当然、金利上昇は株価には逆風になるため、この動きには注意が必要でしょう。
キリンビールの場合は気温1度の上昇で、1日あたり3.6億円の増収要因に
さて、今回は久々に「猛暑」を取り上げてみましょう。このテーマは10年前の夏真っ盛りに一度取り上げたことがあります。その際は「夏と言えば」という視点でビール、飲料、アイスクリーム、夏物衣料、クーラーなどが、そのテーマ銘柄になるとし、同時に季節限定の投資スタイルで臨むことが重要と解説しました。また、コラムが夏真っ盛りで銘柄選択にはややタイミングを逸したこともあり、酷暑の後は厳冬になるケースが多いという経験則から厳冬関連銘柄も注目できるのでは、との見方も提示しました。
今回は前回の反省を受け、夏が来る前にこのテーマを取り上げてみようという狙いとなります。実際、気象庁による長期予報では2024年の6-8月の平均気温を「高い」としており、かなりの暑さが予想される状況にあります。一説には、東京で真夏日が90日も観測された2023年を上回り、観測史上1位の暑さになるとの見方も出ているようです。
猛暑を軸とした株式投資となると、やはりビールや夏物衣料、クーラーといった消費関連銘柄を外すことはできません。コロナ禍前の分析ですが、キリンビールによると夏の平均気温が1度上昇した場合、ビール販売数量は大瓶換算で1日当たり80万本増加するそうです。大瓶単価を450円とすると、実に1日あたり3.6億円の増収要因となるのです。これを飲食店で飲めば、さらに経済効果は大きなものとなります。
コロナ禍後の生活様式の変化や発泡酒やノンアルコールビールの伸長を勘案すれば、その数字には及ばない可能性もありますが、それでも相応のインパクトは十分期待できるのではないでしょうか。アイスクリームもその消費量は気温と高い相関が知られていますし、熱中症対策からクーラーの設置などもまだまだ需要は大きいのではないかと考えます。
季節に起因したテーマ投資のときに留意すべき点とは
ただし、夏季限定という短期間のテーマで投資をする場合、売りタイミングを夏が終わる前から探し始めなければならないことは肝に銘じておいてください。11月には7-9月期決算が発表され、そこで猛暑効果を数字で確認することになるわけですが、この段階では既に冬間近となってしまっており、むしろ材料出尽くしで売り材料となるリスクが否めません。期間限定のテーマ投資は、まさに「期待で買い、事実で売る」という相場格言がそのまま当てはまり、売り時が難しいということを常に意識しておく必要があるでしょう。
夏、猛暑以外に注目しておきたい投資テーマ
前段落で記載した猛暑関連のテーマよりも筆者が注目したいのは防災関連消費とコメ不足のリスクです。猛暑が毎年厳しさを増す中、それに伴ってゲリラ豪雨や線状降水帯も頻発することとなりました。夏は水害の季節にもなってきたのです。気象庁によると1時間当たりの降水量が80mm以上(=恐怖を感じるほどの猛烈な雨)の年間発生回数は、直近10年でおよそ24回と、1976~85年の10年の平均発生回数約14回よりも大幅に増加しています。
災害リスクをゼロにはできないことを考えれば、少しでも減災に寄与する防災用品などの手当てする動きも加速してくるのではないでしょうか。また、熱帯性植物であるコメの不足はやや意外に思われるかもしれませんが、実は猛暑でコメの品質低下が起こり、2023年はコメの流通量が大幅に減少したのです。2024年はさらに猛暑になるとすると、コメ不足がより深刻化する可能性もあるのでは、という懸念です。もしかすると、海外からのコメ輸入が大きく拡大するかもしれません。
猛暑関連銘柄
消費関連、電気機器、百貨店関連銘柄
上述した観点で関連銘柄を考えると、消費関連では、ビール大手3社(キリンホールディングス(2503)、アサヒグループホールディングス(2502)、サッポロホールディングス(2501))、アイスクリーム大手(江崎グリコ(2206)、森永乳業(2264)、森永製菓(2201)、明治ホールディングス(2269)、B-Rサーティワンアイスクリーム(2268)など)、クーラー大手(パナソニック ホールディングス(6752)、ダイキン工業(6367)、三菱電機(6503)、日立製作所(6501)など)がその対象になるのではないでしょうか。夏用衣料などでは百貨店大手(高島屋(8233)、三越伊勢丹ホールディングス(3099)、大丸と松坂屋ホールディングスの共同持株会社であるJ.フロント リテイリング(3086)など)に注目したいところです。日中に涼を求めて百貨店に赴くという方も少なくないように思うと、そこで何がしかの買い物をしてしまうというケースも増えるのではないでしょうか。
防災・コメ不足関連銘柄
防災用品ではカセットコンロ・ボンベ大手の岩谷産業(8088)、防災シート大手の萩原工業(7856)などが、コメ不足に関しては輸入米穀買入資格を有する総合商社(三菱商事(8058)、三井物産(8031)、伊藤忠商事(8001)、住友商事(8053)、丸紅(8002)、豊田通商(8015)、双日(2768))などにビジネスチャンスがあるのではと期待しています。