ECBが利下げ開始を示唆するも、ユーロが強い4つのポイント

ユーロ/米ドルは4月16日の1.0601ドルを底に1ヶ月近く上昇トレンドが続いています。このところ、欧州中央銀行(ECB)の複数の要人による「6月利下げ開始の可能性が高い」との発言が相次いでいます。そのため、市場は6月ECBでの利下げ開始をほぼ織り込んでいるにもかかわらず、ユーロは上値余地を探る動きが継続していますが、その理由として以下の4つが考えられます。

【1】2%台で推移するインフレ率

欧州のインフレ率はロシアのウクライナ侵攻など地政学要因も重なり、2022年10月には10%を超えるところまで上昇していました。ところが、その後インフレは急速に低下し、2023年10月に2.9%台と3%を切ってからは7ヶ月近く2%台で安定しています。

【2】成長拡大期待が膨らんでいる

インフレの鈍化は個人消費を下支えします。2024年のユーロ圏のGDPの成長率予想は0.7%(前回調査0.5%)に拡大している他、域内最大のドイツ経済も1年以上続いた停滞から脱却、フランス、イタリア、スペインの成長見通しも上方修正されています。いかに高すぎるインフレを抑制することが重要なのかうかがえます。

【3】利下げは基本的には通貨売りが要因

4月のECB理事会で6月の利下げ開始が示唆された後にユーロは下落しました。利下げ=通貨安を意味することから教科書的な反応ではあります。しかし、その後、利下げ期待により景気先行指数が改善したことで底入れし、成長率の上昇修正などで上昇基調となっています。利下げによってユーロ圏経済がより拡大するという思惑が通貨高をもたらしています。

【4】米ドル金利が低下傾向へ

一方で、これまで強すぎる経済、粘着性のあるインフレ率から高金利政策の長期化が懸念されてきた米国ですが、足元では予想を下回る経済指標が相次いでいます。高かった米ドル金利は急速に低下を始めており、米ドル売りが加速しています。全般的に米ドル売りとなっていることが、他通貨の上昇につながっています。米ドル/円相場が崩れてきたのもこのためですが、ユーロも米ドル下落で上昇が加速しています。

ユーロ上昇はまだ続くのか。利下げ決定前後の動向に注目

主要国で最も早い利下げ開始が見込まれる欧州ですが、利下げ=通貨売り材料になるとは限りません。ただし、このまま6月ECBに向けてユーロ上昇が続くようであれば、利下げ決定により材料出尽くしの手仕舞い売りが膨らむ可能性もあります。金融政策会合に向けたイベントトレードは発表前の水準、織り込みが重要です。注目の次回ECB理事会の開催日は6月6日です。