CPIが予想を上回り、利下げが遠のく観測で株価は下落
先週S&P500は、1.56%下落、ナスダック100についても0.58%の下げとなりました。先週の市場の注目は、4月10日(水)に発表されたCPI(米消費者物価指数)です。CPIは事前予想の0.3%に対し、0.4%を発表、2024年に入って3回連続のエコノミストらの予想を上回る内容でした。これを受け、6月には利下げが始まると想定していた金融市場では利下げが遠のいたとの観測が強まり、10年債利回り(金利)は急騰、株式市場は下がるという展開となりました。
しかし、翌11日(木)に発表された3月のPPI(米生産者物価指数)は0.2%で、市場予想の0.3%を下回り、かつ、2月の0.6%を下回る内容となりました。この日は、市場予想より低いインフレ指標だったことをうけ、株価上昇という展開となったのです。
次回注目される経済指標は、4月26日(金)に発表される予定の3月のPCE(米個人消費支出)です。こちらはFRB(米連邦準備制度理事会)が最も参考にしているインフレ指標と言われています。今回の予想は3月の発表と同じ0.3%です。
金は史上最高値をつける
リスク資産が売られる一方、先週史上最高値をつけたのが金価格です。先週4月11日(木)には、金価格は1トロイオンスあたり2,372ドルで引け、過去最高値を記録しました。これは2月中旬からは19%の上げ、2024年初めからは15%の上昇で、S&P500の年初からの上昇率の8%を上回っています。
中東におけるイスラエル、イラン間の地政学リスクの高まりに対するリスクヘッジという考え方はあるのですが、それ以外の要因もあるようです。BofA証券によると、このところの金価格の上げは世界中の中央銀行の買い入れが主な理由で、特に中国人民銀行によるものが大きいとのこと。中国における金の現物需要は、宝飾品と投資の両方で旺盛であり、これまでの中国の不動産と株式の下落により、中国では金を持とうとする投資家が増えているとの分析です。
米国の決算発表は事前予想を下回る
米国では2024年第1四半期の決算発表が始まりました。これまでのところS&P500採用銘柄のうち、29社、およそ6%の決算発表が終わっており、現時点では前年同期比で1.99%の増益となっています。3月末時点での予想は、前年同期比で4.18%の増益予想でしたから、現在決算発表は始まったばかりとは言うものの、事前予想を下回る発表となっています。
先週目立った大企業の決算発表は4月12日(金)の世界最大金融機関であるジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の決算発表で、ダウ30銘柄の構成銘柄の1つであることもあり、同行の株価はマーケットの動きに大きな影響を与えました。S&P500はこの日1日で1.46%、NYダウは1.24%とそれぞれ下落しました。
ジェイピー・モルガン・チェースの第1四半期の売り上げやEPSは予想を上回ったものの、問題は純金利収入(NII)です。今回の発表の数字も予想を下回ったのみならず、来季のガイダンス予想も市場予想を下回ったのです。金利が高止まりするなか、金利からの収入は高いだろうというのが市場の予想だったのです。これを受けジェイピー・モルガン・チェースの株価は1日で6.5%下落しました。同行の株価が1日でこれほど下がったのは2021年第4四半期の発表を受け6.2%下落した時以来のことです。
そのような中では、市場のボラティリティの高まりが気になるところです。マーケットでは「恐怖指数」と呼ばれているCBOE(シカゴ・オプション取引所)のVIX指数は1日で16%上昇、17.31ドルで引けました。これは、2023年の10月以来の高いレベルです。
今週も決算発表は続きます。今週は四半期決算のペースが加速し、S&P 500構成銘柄44社を含む約200社が発表する予定です。
今週の主要銘柄の決算発表予定
4月16日(火)
バンク・オブ・アメリカ[BAC]、ゴールドマン・サックス [GS]、ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]、モルガン・スタンレー[MS]、ユナイテッドヘルス・グループ[UNH]、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス[UAL]
4月17日(水)アボット・ラボラトリーズ[ABT]、 ASMLホールディング [ASML]、アルコア [AA]、シーエスエックス [CSX]、 ディスカバー・フィナンシャル・サービシズ[DFS]
4月18日(木)
ディーアール・ホートン[DHI]、 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング[TSM]、ネットフリックス[NFLX]
4月19日(金)
アメリカン・エキスプレス[AXP]、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]