地政学的リスク、インフレ懸念が再燃
先週のS&P500は0.95%下落、ナスダック100は0.8%下げて1週間を終えました。
中東では、イスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃、中東での地政学的リスクの高まりや、FRB(米連邦準備制度理事会)高官による発言、インフレを示唆する経済指標の発表など、2024年後半の利下げに対する、複数の懸念が浮上しました。
中東情勢の悪化により原油価格は上がり、WTI原油価格は先週1週間で83.17ドルから86.91ドルへと上昇、2024年の高値をつけています。加えて先週は有事の金買いも起き、金価格も2,330ドルと、史上最高値をつけています。
また、4月5日(金)の雇用統計は市場の予想を上回る内容であったことも手伝い、先週の米国10年債利回りは4.200%から、週末には4.401%と、2023年11月末の高水準へ上昇しました。2023年末の利回りは3.844%でしたから、2024年に入りこれまでに0.557ポイント上がったことになります。
先週4月4日(木)には、イスラエルのネタニヤフ首相のイランに対する過激な発言と、米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁が、「インフレ率が横ばいで推移し続けるなら、利下げを行う必要があるか疑問視される」と述べたことを受け、S&P500は1.23%、ナスダック100は1.6%下落しました。
この日のマーケットの下げをみると、下げトレンドの始まりかという雰囲気があったのですが、翌5日(金)には市場の予想を上回る雇用統計の結果にも関わらず、株価は上昇に転じたのです。このような動きをみると、マーケットはなかなか下がりたくないようです。
決算発表の皮切りは銀行セクター
これまで企業業績関連のニュースについては、2月末に決算発表が終わった後、ノー・ニュース(ニュース不在)の期間となりましたが、今週からは2024年第1四半期の決算発表が始まります。
現時点のS&P500のEPS予想は、前年比で3.93%の増益となっています。ほぼ1ヶ月前時点での予想(3月1日付)では、4.29%の増益予想でした。アナリストは決算発表の時期の前に業績予想の下方修正を行う習性があるのですが、今回の下方修正は過去と比較して小幅にとどまっています。
S&P500全体では3.93%の増益予想ですが、テクノロジー・セクターを除いたS&P500の業績予想ですと0.31%の増益と、前年比ほぼフラットの予想となります。S&P500のテクノロジー・セクターの業績予想は20%の増益予想ですから、やはり、市場の方向性を決める主なセクターはこれまで同様テクノロジー・セクターということなのだと思います。
いつものように決算発表の幕を開けるのは、銀行セクターです。4月12日にジェイピー・モルガン・チェース[JPM]、シティグループ[C]、ウェルズ・ファーゴ[WFC]などのマネーセンターバンクの発表があります。S&P500が年初から先週末まで9%上がる中、S&P500銀行セクターは同期間で12%上昇しました。今回の銀行セクターの業績が市場予想を裏切らなければ、引き続き銀行株のラリーは続き、市場の上昇のサポートとなるはずです。
株価の調整は絶好の買いの機会か
市場全体としても、年初からこれまで調整らしい調整なしで上昇してきました。株価の調整は極めてノーマルなことで、今後上昇を続けるためには必要なことです。これから年末に向けての米国企業の業績見通しについては、利益率は改善、前年比で業績増のトレンドが見込まれています。ですから、もしも今回の決算発表で、業績ミスがトリガーとなり株価の調整が起きるとすれば、そこは年末のラリーに向けての絶好の買いの機会と考えています。
今週の注目の経済指標は、4月10日(水)発表予定の3月のCPI(消費者物価指数)です。