日経平均は3月下旬に更に最高値を更新しました。急ピッチな上昇に対する懸念は付き纏いますが、月の中旬には程よい日柄調整も入るなど、それなりに健全な動きにあるように感じています。

日銀の17年ぶりの利上げに市場がむしろ材料出尽くしとして受け止めたことを見ても、相場の地合いは強い印象です。一進一退を繰り返しつつとなるでしょうが、まだしばらくは強気相場が続くとの見方を継続したいと考えています。ただし、強気の時ほどリスクへの備えもまた重要であることは論を待ちません。「何かおかしなことはないか」というアンテナは、しっかり張っておく必要があります。

公示地価は34年ぶりの高い伸び、東京圏でも1.2倍

さて、今回は公示地価を採り上げてみましょう。3月26日、国土交通省は2024年1月1日時点の公示価格を発表しました。この内容は非常に興味深いもので、強気相場への期待値をさらに高めるものであったと受け止めています。今回発表された公示地価は、全国の主用途平均で2.3%、3年連続の上昇となりました。上昇ピッチは年々加速し、ついに今回は34年ぶりの高い伸びとなっています。

中身を見ると、地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)の上昇が顕著で、住宅地で7.0%、商業地では9.2%もの上昇です。3大都市圏(東京、大阪、名古屋)も全体で3.5%、住宅地で2.8%、商業地は5.2%の上昇と、全体を大きく引上げているのがわかります。

概して地価の上昇傾向は鮮明で、地方4市の上昇は実に11年連続、全国や3大都市圏では2021年こそコロナ禍で一旦前年比下落となりましたが、それを除くと2014年より一貫して底上げが進んでいます。アベノミクスが奏功し始めた2013年を基準とすると、2024年の公示地価は地方4市で1.7倍、東京圏でも1.2倍になっている計算です。平均でこの数字ですから、もっと地価が上昇している場所があることは想像に難くありません。

不動産価格はピークステージに近付いているのか?資産効果の拡大に期待

3大都市圏の地価動向ばかりに目が向けられる中、特に注目されるのは、地方4市の公示地価はそれを上回る上昇にあるという事実です。これは、おそらく大方の先入観を覆すものではないかと想像します。コロナ禍期間においても地価は上昇を続けていたのですから、その勢いは推して知るべしというところでしょう。不動産価格の上昇は東京などの大都市圏だけではなく、(もちろん中核都市限定ですが)全国的に押し並べてみられる現象となっているのです。

なお、不動産価格はまず3大都市圏の地価上昇が先行し、遅れて地方の地価が上昇、その後、今度は逆に地方で値崩れが生じ、最後に3大都市圏で価格調整が起きるというのが一般的なパターンです。このパターンに当てはめると、地方地価の上昇が(3大都市圏よりも)大きいということは不動産価格トレンドがピークステージに近づいているように見えます。これはどう捉えるべきなのでしょうか。

私見ですが、これまでの地方の地価上昇はそれ以前の地価下落が激しかったことの反動であり、通常のパターンとは切り離して見た方が良いのではと考えます。つまり、現在はようやく3大都市圏の地価上昇が先行してきたという第1ステージに入ったところなのでは、と理解しています。

不動産価格の上昇がもたらすものは、当然ながら、資産効果の拡大です。資産効果とは、保有資産の価値向上が消費や投資への心理的・経済的余裕を生み、それらがまた経済を加速させるというものです。

ちなみに、バブル崩壊後は株価や不動産価格の下落が消費や投資を劇的に冷え込ませた「逆資産効果」が生じました。その結果、個人消費は落ち込んでデフレとなり、多くの企業や金融機関は不良資産を損切し、リスクを取らない経営へと大きく舵を切ったのです。アベノミクス以降は徐々にこのマイナス効果が緩和され、ここにきてついに反転し、資産効果が期待される状況に至ってきたと言えるのかもしれません。

公示地価の上昇で注目される関連銘柄

では、株式投資の観点から公示地価の上昇でどういった銘柄が注目されるでしょうか。まずは資産効果がもっとも顕著に現れる消費関連です。資産効果によって生まれた(心理的・経済的)余裕が向かう消費先は、おそらく不要不急のものになると予想します。

具体的には旅行や高級レストラン、ハイブランド製品といったものです。豪華客船事業を擁する日本郵船(9101)、高級レストランチェーンのひらまつ(2764)、業界時価総額最大手となる三越伊勢丹ホールディングス(3099)などは、各領域で最大の時価総額を有する企業群と言えるでしょう。

企業側に視点を移すと、資産効果の期待できる「土地持ち企業」がその有望な対象と言えるでしょう。特に、住宅地や商業地で「大家業」を営んでいる賃貸不動産、電鉄といった業種の企業には「含み益」の拡大による実質的な企業価値の拡大が考えられます。不動産では、三菱地所(8802)、三井不動産(8801)、住友不動産(8830)などが、電鉄では東日本旅客鉄道(9020)、西日本旅客鉄道(9021)、東急(9005)などが、それぞれ土地持ち企業の大手として挙げられるでしょう。

公示地価を考えて投資をする際に留意すべき2つのポイント

なお、公示地価を考えるうえで留意すべき点が2つあります。1つは、公示地価は「過去の数字」であることです。良いデータが出ていたとしても、現在は違っている可能性があることを常に意識しておく必要があります。

そして、もう1つは金利です。不動産価格は金利と高い相関があり、金利の上昇は基本的に不動産価格の押し下げ要因となります。日本は17年ぶりの利上げに転換するなど、どちらかというと金利は上昇方向にあると言えます。この影響もまた無視できないことを頭の片隅に留めておいていただきたいと考えます。