「私たちは戦争の真っ只中にいるのです」と私に教えてくれたのは、ウクライナ人でもなく、パレスチナ人でもありません。そう言ったのはエチオピアの首都アジス・アベバの観光ガイド、32歳のガショー君。2024年3月のことです。

彼はエチオピアで2番目に難しいとされる大学で英文学を勉強、卒業したものの仕事が見つからなく観光学を勉強し直し、今や5人のガイドを雇う観光ガイド会社の社長となった努力家頑張り屋さんです。そんな彼が言ったのがこの言葉でした。エチオピアというと、「ああ、あの貧しい国か」と思う読者もいるかもしれません。実際、1995年におけるエチオピアの貧困率は67%という最貧国のひとつでした。しかし、2019年には29.4%まで下がってきています。しかも、ここからの経済成長率の予想を見ると、エチオピアのGDP(国民総生産)は、2050年までに3倍に成長すると予想されるという、長期的なポテンシャルを潜めている国なのです。

そんな経済成長のポテンシャルという魅力的な側面がある一方で、日本ではあまり報道されていない問題を抱えています。それが彼の言った内戦のことです。エチオピアでは、2020年10月にエチオピア政府と反政府勢力との内戦が始まり、2022年11月には和平合意に至ったものの、戦いが行われた地域の国境付近では、武力衝突時に侵攻してきた隣国のエリトリア軍が残存しているそうです。こうした軍との武力衝突の可能性があったり、いまだ一部の州では武装勢力による襲撃等の可能性があると報道されており、平和からはほど遠い状況にあるそうです。

この話を聞いて、平和になったと思われたイラクを訪問した時のことを思い出しました。
今から10年以上前のことです。私は、イラクが一時的に平和だった頃、イラクの北部エルビルという街でイラク証券取引所主催のイベントへ招待され、勉強のためと思い当時大学生だった私の長男を連れてイラクの北部クルド人地区にあるエルビルという街を訪れたことがあります。米国国務省の安全情報サイトでイラク北部は問題がないことを確認し訪問する判断をしたのです。 私たちが訪れた当時の現地の状況は日本では感じない緊張感はあったのですが、確かに平和ではありました。ですが、その後そのたった半年後エルビルはISISによる侵攻を受け、安全と思われたエルビルの街はあっという間に非常に危険な状態に陥りました。

今回のエチオピア訪問に話を戻すと個人的にこんなことも経験しました。
私がアジス・アベバの大通りで、スーパで買い物をしている友人を待っていた時のことです。 iPhoneで通りの様子の写真を撮っていると、そのiPhoneをひったくろうとする若者が現れました。幸いたまたまそこにいたお店のガードマンがその若者の行動が怪しいことに気づき、走って助けに来てくれたため若者は走ってその場から逃げてことなきを得たのですがこの話を日本を良く知るアメリカ人にしてみたところ、そんなのはマンハッタンでもよく聞く話だというのです。「電車の網棚にカバンを置いて、盗まれないのは日本くらいなものだよ」と言われ、考えてみると確かにそうだなと思ったところです。

また、アジス・アベバで訪れた大型ショッピングセンターに入ったところ、そこは真っ暗、係員に聞くと停電とのことでいつ修復するかわからないとのこと。また、宿泊していた三つ星ホテルでも、夜中に水道が突然止まり、朝まで使えなかったということがありました。

日本は世界の多くの国々と比べると基本インフラは整っており、ましてや内戦が起きることは想像もできない平和な国です。今回改めて私たちがどれほど恵まれた環境の中で生活しているかを考えさせられた一方、これはよく言われるのですが、日本の常識は世界の非常識であることを知っておくべきだと改めて思いました。

日本は平和であっても日本の周辺を見ると、台湾有事の可能性、北朝鮮のミサイル問題など日本を取り囲む環境は必ずしも平和なものではありません。ただ、多くの日本人はどこか他人事の様にとらえているような感じがします。有事に備えるとまでは言いませんが、平和な今だからこそ少なくとも、もう少し高い意識を持ち、隣国の情勢が私たちの生活にどう影響を与えるか考えておいた方が良いのではないかと思った次第です。