揺れる利下げ観測の背景に、強すぎる米国の経済指標と働き手の急減
2023年年初の時点では、2023年7月から米国の利下げが開始されると予想されていました。ところが2024年2月になっても利下げは始まっていません。現状あまりに米国の経済指標が強すぎるのです。そのため、足元では年央6月に利下げが開始されるというのがコンセンサスとなりつつあります。しかし、それも今後出てくる米経済指標が強ければ利下げ開始タイミングはさらに遅れるかもしれません。
では、なぜ米景気は強いのでしょうか?
米国ではベビーブーマー世代の高齢化に伴い人口に占める退職者の割合が急増すると予想されていましたが、コロナ禍によってこの予想を大きく上回る引退者が出ていると報じられています。「グレート・リタイアメント」と呼ばれるこの事象は2023年12月にコロナ禍後の最高水準に達しました。つまり、働き手が急減しているのです。
その理由の1つに株高があります。米国の主要株価インデックスは2024年には軒並み過去最高値を更新しており、その「資産効果」から米国の労働者は働かなくてもゆとりのある生活が可能になっていると推測されています。
ベビーブーマーと呼ばれる1946年~1964年生まれの世代は7700万人存在するとされ、米国人口動態の中核となっています。彼らは現在59~78歳。70代はリタイアしても不思議ではありませんが、50代の復職が鈍いのは資産が米株高で潤ったことで労働意欲が低下しているためではないか、と言われているのです。
円安/米ドル高は継続の気配
株高が労働市場の引き締まりの一因であり、資産が潤っていることから現在の高金利下でも消費が衰えないのだとしたら、インフレはこれ以上落ちない可能性があるかもしれません。今週発表された米1月消費者物価指数(CPI)が予想を上回っていたことで米金利が上昇、米ドル/円上昇となりましたが、米株高が続く限り米利下げ開始は遅れ米ドル/円相場による円安/米ドル高のトレンドを持続させるものと考えられます。