◆おそらく日本中がテレビの前に釘付けになったことだろう。昨日行われたサッカーW杯ブラジル大会での日本対コートジボワールの一戦である。本田選手が見事なシュートを放ち先制点を挙げたが、日本代表は惜しくも逆転負けで初戦を落とした。

◆2年後にリオで開催されるオリンピックと並んで、今回のサッカーW杯開催がブラジルの成長を宣伝する材料になってきたことは事実であろう。BRICs(ブラジル・ロシア・インド・チャイナの頭文字)に投資するファンドの説明書は社会科の教科書かと見間違うばかりにブラジルの地理・歴史・社会が解説されている。新興国における五輪・W杯など大きなイベントの開催は国家発展の象徴として引き合いに出されることが多い。

◆投資先の国情を詳しく説明する一方で、肝心の「投資」に関する説明がお粗末な事例が後を絶たない。ブラジルの通貨レアル建ての投信を持つ顧客に対し、ある営業マンが「これからレアルは下落する可能性がある」などと説明し、売却を促した。ところが乗り換え先に勧めたのは同じレアル建ての債券だった。

◆これを「手数料稼ぎの回転売買」もしくは「詐欺」という。こんな不届きな輩は、ゴールポスト前に立たせて(かつ急所をガードすることを禁じて)、本田選手の強烈なシュートを雨あられのごとく見舞ってやったらどうだろう。いや、だめだ。本田選手のシュートを浴びせるなどもったいない。第一、そんな人間をピッチに立たせてはサッカーの神様のバチが当たる。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆