◆先週末の小欄で、「押しも押されぬ堂々のベストセラー」と書いたら、その言い方は誤りである、と指摘を受けた。正しくは「押しも押されもせぬ」である。「押しも押されぬ」は、「押すに押されぬ」と混同した誤用であると。誠にお恥ずかしい限り、謹んで訂正致します。

◆言い訳にもならないが、間違った使い方をするひとは多い。文化庁の平成15年度「国語に関する世論調査」では、本来の言い方である「押しも押されもせぬ」を使う人が4割に満たず、間違った言い方である「押しも押されぬ」を使う人が5割強だった。平成24年度の調査では正しい使い方をするひとが4割強に上昇、誤用するひとの比率は5割を切ったが、それでもまだ半数近くのひとが「押しも押されぬ」を使っている。

◆言葉は時代とともに変化する。無論、受け入れられる変化と許容すべきでない変化とがある。言葉の変化ではないが、最近驚いたのはインターネット検索の変化である。ネット検索といえば、グーグルを検索エンジンに使うのが一般的だと思っていたら、最近の若いひとはツイッターで検索するという。彼らは物心ついたときからスマホやタブレットに慣れ親しんできた。デスクトップでウェブ検索するよりスマホのアプリで調べるのが自然なのだ。ヤフーの上場が1996年、グーグルが2004年、ツイッターが2013年。ほぼ10年おきに時代の寵児たる企業が表舞台に立っている。もう次世代の主役企業はきっと誕生しているのだろう。僕らがその存在に気づいていないだけであって。

◆得意げに「ググる」なんて言葉を使って若ぶってみても、それすらすでに「死語」になり始めている。時代に流されない、押しも押されもせぬ、立派な日本語を使っていきたいものである。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆