◆なぞなぞ「おかねを預金しても利息がつかなくて、逆に損しちゃう銀行ってなーんだ?」答え「欧州中央銀行」。欧州中央銀行(ECB)は先週開いた理事会で、民間銀行が預け入れる余剰資金にマイナス金利を導入することを決めた。主要国の中央銀行としては初めてのことである。
◆マイナス金利といわれてもピンとこないかもしれない。民間の銀行がECBに資金を預けると利息を受け取るのではなく、逆に手数料を徴収される。手数料を払って貸金庫を借りるようなものだ。これではどの銀行も余剰資金をECBには預けない。行き場所を失くしたおかねは企業向けの貸出に回るはず - それがECBドラギ総裁の狙いだが果たして思惑通りいくだろうか。世界が見守る壮大な経済実験が始まった。
◆ECBがここまで思い切った金融緩和に踏み切るのは、ユーロ圏の低インフレが一向に改善する兆しがないからだ。なにしろ物価上昇率は0.5%、デフレに陥るすれすれの状況である。翻って我が国は消費増税の影響も限定的で、いまのところ脱デフレへ着々と歩んでいる。物価上昇率の変化度合いで言えば、先進国のなかで一番インフレへ向かうスピードが速い。
◆気が付けばインフレの世になっていた、ということもじゅうぶんあり得る。「おかねを預金しても利息がつかなくて、逆に損しちゃう銀行ってなーんだ?」答え「日本にあるすべての銀行」というなぞなぞが流行る日がくるかもしれない。インフレになっても金利が上がらない。実質金利マイナスの状態でキャッシュを持つのは、事実上「損」しているのと同じである。あなたが気付いているか知らないが、今の日本はすでにそうなっている。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆