5年に1度行われるPISA国際学力調査で、日本が大躍進を遂げたことが大きく報じられています。 数学で5位、読解力で3位、科学で2位と、3分野全てにおいて世界トップレベルで前回より得点も上昇しました。コロナ禍の影響が少なかったことや学びの工夫が功を奏したようです。
しかし、社会人の方々には、この数字に違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。日本は、物価上昇がゼロ以上に浮上したこの数年間もほぼゼロ金利の預金を増加させていますし、他国よりもサイエンス系のイノベーションが進んでいるとは言えない状況です。
この違和感の背景を考え出したらキリがないかもしれませんが、一点だけ、今回のPISAデータを見て大きな問題だと感じたことを挙げます。それは、学びの場で「実社会との結びつきが少ない」という点です。
調査では、数学を実生活における事象と関連付けて学んだ経験を聞く項目があります。日本は、そのスコアが平均より圧倒的に低く、7割以上の学生が、「先生が私たちに、日常生活で数学がどのように役立つかを示してみせた」のは「授業の半分以下かゼロ」と答えました。
世界トップクラスの学力を生活と連携させられず、卒業とともにその知識が失われているとすればものすごい損失です。学校では、明日からでも指導方法を改めて欲しいと思います。例えば、高校で金融教育が始まったことは素晴らしい一歩だと思いますが、数学の授業と連携して、将来の企業利益の現在価値とか利息の複利計算から自然対数の底を考えるとか、投資の世界で数学を絡めることは大変重要だと思います。我々のようにとうの昔に学校を卒業した者も、かつて受けた世界水準の教育を生かして投資を考えるのもよいのでは、と思います。それで勝てるかどうかは別問題かもしれませんが…。