◆先月の北米出張以来、この一月というもの、目が回るような忙しさだ。土曜日の夕方に米国から帰ってきて翌日の日曜には日経新聞社主催のセミナーで講演。その後も、モーサテ出演、札幌での講演会に加えて、ファイナンス学会に大学院での講義、論文審査会などで土日がすべて潰れている。この週末も土曜日にマネックス全国投資セミナーで福岡から戻ったら、翌日曜には日経新聞のセミナーで大阪をトンボ帰りだ。

◆夜も自社のオンラインセミナーに加え、ソニー銀行さんのセミナーがあり、さらに「日経プラス9」への出演が今月2回。うち一回は番組出演終了後にテレビ局の楽屋からオンラインセミナーを行い、終わったのが22時過ぎ。朝も夜も土曜も日曜も働きづめで、「広木さんはいつ寝ているのですか?」という質問をよくいただく。「ご心配なく。平日の昼間、寝てますから」と答えているが、もちろん冗談である。朝・夜・土日に仕事があるということは、平日の昼間はその準備に充てるのだ。

◆そんな超多忙な中、高校生の娘に勉強を教えている。英語や社会系の科目は問題ないが、高校の数学になるとさすがに少々覚束ないので、僕が家庭教師の先生について勉強し、それから娘に教えている。毎週1時間、オンラインでのマンツーマン授業で、今は微分・積分を習っている。加えて、島村楽器の音楽教室でジャズギターを習い、ゴルフの練習とジムに行き、犬の散歩で朝夕1時間歩き、家族のために料理を作ったりしている。忙しくてテレビを観る時間がないのでNHKの朝ドラ「ブギウギ」と大河ドラマ「どうする家康」のほかはドラマを3本くらいしか観ていない。好きな観劇も月1回ほどのペースだ。本は週に20冊は買うが、結局、じっくり読む時間がとれないので「流し読み」か「積読」になっている。したがって読書はもっぱらAudibleの2倍速で歩きながら本を「聴いて」いる。

◆と、いうわけでオチは「忙しいけど全然オッケー」というもの。忙しさが苦ではない。好きでやっているから、つまりは全部、自分の裁量でやっていることだからである。これが強制されてやらされるなら、たまらないだろう。世の中にはいまだに「ブラック」な企業や組織が存在する。新型コロナウイルスの感染が拡大していたおととし、消毒作業を行う会社に勤めていた40代の男性が自殺したのは、長時間労働が原因の過労死だったとして、労災認定された。宝塚歌劇団に所属する女性が自殺を図ったのも長時間労働が原因のひとつであるという。

◆ブラック企業が存在する一方で、「健康経営」や「ウエルビーイング」という言葉もよく目にするようになった。ポイントはこれらをバズワードだけで終わらせない、ということだ。世間で言われているから、流行っているから、うちも「健康経営」を取り入れます、みたいな風潮が日本企業にはありがちである。ただ、難しいのは「ホワイト」過ぎても若い人が育たないという点だ。以前にも書いたが、適度に厳しくないとやりがいや成長性を感じられずに組織を去っていく若者も多いと聞く。「過ぎたるは及ばざるが如し」だが、働き方についてもちょうどよい適量、適温を探るのは難しい。仕事の内容や性質にもよるだろう。そしていちばん大きいのは個人差だ。どんな仕事でどのように働くか。それを決めるのは自分である。
ただし、自分に合わない、辛いと感じていても仕事を放り出せない事情を抱えているひともいるだろう。答えはひとつではない。難しい問題である。