先週の振り返り=米ドル/円は5営業日続伸で151円台後半へ

先週の米ドル/円は5営業日続伸し、151円台後半まで上昇しました。前の週に、151.7円から149円割れ近くまで米ドル急落となった分を1週間でほぼ取り戻した形となっています(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2023年8月~)
出所:マネックストレーダーFX

先週の米ドル/円反発の特徴は、日米金利差からかい離が目立ったということでした(図表2参照)。先週は米経済指標では注目度の高いものはありませんでしたが、前の週に米雇用統計などが予想より弱かったことから米金利低下となった動きは基本的に引き継がれた形となりました。ただ、そのような米金利低下に対する米ドル売りの反応は鈍く、上述のように米ドルは1週間を通じて、じりじりと上昇する展開が続く結果となったわけです。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2023年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日本の通貨当局による円安阻止介入への警戒感は漂い続けたようでした。しかし、特にこれといった米ドル買い材料も見当たらない中で、そのような介入を試すような米ドル買いが続くうちに、結果としてこの間の米ドル高値である151.7円目前まで米ドル高・円安に戻ったということではないでしょうか。

今週の注目点=米景気動向と円安阻止介入

小売売上高など景気指標への反応が大きくなる可能性

今週は、先週とは打って変わり、注目度の高い米経済指標発表が相次ぐ見通しとなっています。中でも、11月15日予定の米10月小売売上高など、米景気の動向を確認する指標に注目が高まるのではないでしょうか。今週発表予定の米経済指標の具体的な予想などは以下のようになっています。

11月14日:10月CPI(消費者物価指数)総合=前回3.7%、予想3.3%
       同コア=前回4.1%、予想4.1%
11月15日:10月PPI(生産者物価指数)総合=前回2.2%
                  同コア=前回2.7%
10月小売売上高=前回0.7%、予想-0.4%
10月NY連銀製造業景気指数=前回-4.6、予想-2
11月16日:10月フィラデルフィア連銀景況指数=前回-9、予想-11.5
10月鉱工業生産指数=前回0.3%、予想-0.3% 

米7~9月実質GDP速報値が前期比年率で4.9%という異例の高い伸びとなったことに象徴された「強すぎる米景気」。そんな米景気が10~12月期にかけてどれだけ減速するかが、現在の金融市場の大きな注目点となっています。その意味では、今週発表予定の米経済指標の中でも、これまでとは異なり、CPI(消費者物価指数)などのインフレ指標より、小売売上高などの景気指標への反応が大きくなる可能性があるのではないでしょうか。

米景気指標は、今のところは前回実績より弱い結果になるという予想が多いようです。予想通りに米景気の減速を確認し米金利が一段と低下するかは、先週こそ米金利及び日米金利差との関係が薄れたとは言え、やはり米ドル/円の行方を考える上では重要な目安であることに変わりはないでしょう。

米ドル/円、151円台後半で止まらないなら155円を目指す新たな段階入るか

2023年のこれまでのところの米ドル高値は151.7円程度、そして151.9円は2022年10月21日に記録した米ドル高値です。以上から、151円台後半は米ドル/円にとって、テクニカルには大きな分岐点の可能性がありそうです。要するに、米ドル/円の上昇は151円台後半でも止まらないようなら、155円を目指す新たな段階に入る可能性が出てくるのではないでしょうか。こうした中では、日本の通貨当局による円安阻止介入との攻防には一段と注目が高まることになりそうです。

円安阻止介入は、2022年に3回行われましたが、いずれも介入直後は最大5円程度の米ドル急落となりました。その意味では、仮に今回152円前後で円安阻止介入が実現した場合は、147円程度まで米ドルが急落する可能性もあるでしょう。

円安阻止介入があれば5円程度の米ドル急落の可能性も

介入で米ドル急落となった場合でも、これまでは割安になった米ドル買いが広がることで比較的早い段階で米ドルは反発するのが普通でした。ただ、ここまで一本調子で米ドル/円が上昇してきたことで、為替市場のポジションは米ドル買い・円売りに大きく傾斜している可能性があり、さらなる米ドル買いの余力には微妙な面もあります(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

また、次第に年末が近づく中で、特に個人投資家は米ドル買いポジションの損益確定の意識が高まっている可能性があります。要するに、さらなる米ドル上昇余地が限られ、むしろ米ドル下落リスクが懸念されるようなら、米ドル買いポジションの手仕舞いで米ドル売りに転じる可能性もあるでしょう。このような米ドル買いから米ドル売りへ転換する主な手掛かりが、米金利の低下や円安阻止介入ということになるのではないでしょうか。

以上を踏まえると、今週は介入にらみで米ドルは高値波乱含みの展開が予想されます。個人的には円安阻止介入も十分ありうると考えています。そのため、さらなる米ドル高の余地は限られ、介入があった場合は5円程度の米ドル急落の可能性もあるでしょう。米ドル/円の予想レンジは147~153円中心で想定したいと思います。