今月11日、米石油メジャーのエクソンモービルが米シェール大手パイオニア・ナチュラル・リソーシズを約8.9兆円で買収すると発表したかと思ったら、23日にはシェブロンが原油や天然ガスの開発を手がける米ヘスを約8兆円で買収すると発表しました。世界はネット・ゼロ・エミッション(廃棄物の排出をゼロにする)に向けて動いているのではなかったっけ?確か2年前のエクソンモービルの株主総会ではアクティビストが環境対策への取組み姿勢が足りないとしてCEOの解任要求していなかったか…。この化石燃料企業の相次ぐ大型買収の裏には一体何が?と驚いたのですが、番組でエネルギーの専門家の方にお伺いしたところ、買収されたシェール大手パイニアの生産する原油は軽質油で、CO2排出量が重質油の半分に圧縮できることを知りました。つまり、ESGの観点からも歓迎すべき買収なのです。

また、シェブロンが買収した米ヘスもシェールオイルや海底油田の開発を手掛けていますが、注目されているのが南米の最貧国とされるガイアナ共和国の油田。近年大規模な石油鉱床があることが発見され瞬く間に産油国となりました。現在のガイアナの原油生産量は日量40万バレル程度ですが2028年には100万バレルの安定生産が見込まれています。そう、このガイアナ産原油も超軽質油なのです。ヘスのガイアナ原油の権益保有比率は30%にも上ります。エクソンもまたガイアナ権益を45%保有しているんですが、(そもそもガイアナ石油鉱床はエクソンが発見した)残念ながらここに日本の名前はありません。残りの25%程度を中国企業が保有しています。

今回の買収によって、エクソンモービル1社の生産量はUAEやクエートといった国家の生産量に匹敵する規模に拡大します。米国はすでに世界一の原油生産量を誇りますが、資本の効率化で産油量はさらに拡大する見込みで中東産油国にとっては、米国産原油はさらなる脅威になるでしょう。

ITサービス分野でGAFAMが世界のプラットフォーマーであるだけでなく、原油資源も米国が抑えているわけでドル需要は強い。米ドルが基軸通貨であり続ける所以ですね。