ハマスのイスラエル奇襲攻撃前は、上昇を続ける米長期金利を嫌気して売り込まれていたGOLDですが、有事勃発で大きく買い戻されています。有事、資金の受け皿となる安全資産には米国債、スイスフラン、GOLD、日本円などが挙げられますが、円はこのポジションから陥落して久しいですね。スイスフランはドルに対しても円に対しても上昇しており、有事には避難通貨として資金の受け皿となることが改めて確認できます。
問題は米国債。今回の中東リスクを受け、長期金利は10月6日の4.88%台から4.5%台へと急低下。やはり世界一の安全資産は米国債であることが示されたか、と見ていたのですが、あっという間に切り返されて10月19日現在4.98%まで上昇しています。つまり、この有事でも米国債は売られている。その背景を探ればいくらでも文字数を埋められますが今回の主題ではないので割愛。注目はGOLDです。
米金利上昇に怯むことなく上昇している背景は、まさしく「有事の金買い」に見えます。ただし、投資家動向を注意深く確認するとGOLD ETF市場に資金流入が見られるわけではなく、有事勃発前に金先物市場で売り込まれていたポジションの買い戻しが主体のようです。昨今、世界の中央銀行が金準備高を積みます動きが加速しており、安値ではそうした金需要もあると見られますが、中央銀行は高値を追う買い手ではありません。
過去の有事を丹念に調べていくと「有事の金買い」は短命に終わる傾向が強く、むしろ有事前の不穏なムードで買われ、有事勃発で吹き上がったところは絶好の売り場とされてきました。現在はイスラエル地上軍のガザ地区侵攻懸念がGOLDを押し上げているものと考えられますが、有事に急上昇した高値は利食うものだ、というのがGOLDトレーダーの常識です。足元では米金利上昇に怯まぬ強さを見せていますが、ここからの急変動時には急落のリスクもあることに留意しておきたいですね。