モトリーフール米国本社、2023年10月15日 投稿記事より

主なポイント

・バークシャー・ハサウェイのチャーリー・マンガー副会長は最近のコンファレンスで、人工知能(AI)は実際の価値以上に過大評価されているとの見方を示した
・バークシャー・ハサウェイの3,450億ドルに上る上場株式ポートフォリオには、多くのAI関連企業が含まれている
・そのうちの8社は、AIへの取り組みが特に際立っている

ウォーレン・バフェット氏とチャーリー・マンガー氏は、バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]を通じて多くのAI関連銘柄を保有している

人工知能(AI)は革新的テクノロジーであり、インターネットやスマートフォンよりも大きな影響を経済に及ぼす可能性があります。文章、画像、動画、さらにはコンピューターコードさえも生み出す生成AIの能力は、企業がこれまでに経験したことのない生産性の加速をもたらすかもしれません。

投資界も沸いています。エヌビディア[NVDA]をはじめとするAI関連銘柄の株価は年初来で急騰していますが、ある投資界の巨人は、そろそろブレーキをかける時期ではないかとみています。

投資会社バークシャー・ハサウェイ[BRK.B]で副会長を務めるチャーリー・マンガー氏は、1970年代から伝説的投資家であるウォーレン・バフェット氏と一緒に仕事をしています。報道によると、マンガー氏は最近のコンファレンスで、AIが「大騒ぎされているが、過大評価されている可能性がある」と述べました。同氏は、AIはかなり以前から存在していると指摘した上で、例えば、AI技術によってがんを治すといった画期的なことが近いうちに実現する可能性について、懐疑的な見方を取っています。

AIに懐疑的な発言もあるなか、多くの投資先がAI関連銘柄となっている理由

そうした懐疑的な見方の一方で、上場株式や証券で構成されるバークシャー・ハサウェイの3,450億ドルに上る投資ポートフォリオには、AIを活用して事業を急成長させている企業が数社含まれています。とはいえ、マンガー氏とバフェット氏は必ずしもそれが理由で購入したわけではないでしょうし、そもそも購入を決定したのはその2人ではないという可能性もあります。以下では、バークシャー・ハサウェイが保有するAI関連銘柄8社を紹介します。

アップル[AAPL]:バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに占める割合は47.2%

アップル[AAPL]は、iPhoneやMacコンピューターといった、最も人気のある消費者向けデバイスを製造しています。と同時に、会社側はそれを全面的にはアピールしていませんが、AI分野の一大勢力でもあります。

アップルは、AIの基礎となるチップを独自に設計しています。新型のiPhone15に搭載されている中央演算処理装置(CPU)の「A17 Pro」チップは、予測テキストや音声アシスタントSiriといったAIワークロードを高速処理することができます。驚くことに、これらの処理はすべてクラウド上ではなくデバイス上で行われ、同社のチップがいかに強力になったかを物語っています。

もちろんアップルのネイティブ・モバイルアプリのいくつかはAIに依拠しており、カメラや、Apple Musicはパーソナライズされたプレイリストのセレクトに、AI技術を活用しています。

バークシャー・ハサウェイの3,450億ドルのポートフォリオの半分近くがアップルに投資されているため、同社は将来的にAIの巨大な受益者になる可能性があります。

バンク・オブ・アメリカ[BAC]:ポートフォリオに占める割合は8.1%

銀行とAIが結びつかない人もいるかもしれませんが、AI技術は、導入に積極的な金融機関に多大な影響を与えています。バンク・オブ・アメリカ[BAC]は2018年に、顧客からの問い合わせに対応し、支店やコールセンターの負担を軽減することを目的とした、AIチャットボットの「Erica」を導入しました。

Ericaはこれまでに顧客と累計15億回のやり取りを行っており、今後さらに洗練されるにつれ、銀行側はサポートスタッフにかかる人件費をますます削減できるかもしれません。Ericaの成功を受け、同行は2023年9月に、この技術を法人顧客向けのデジタルバンキング・プラットフォームであるCashProに組み込む決定をしました。これによりCashProの性能が向上し、顧客は取引記録へのアクセスや口座情報の検索が素早くできるようになります。

通常は動きの遅い銀行セクターですが、長期的にAIの恩恵を大きく受ける可能性があり、結果として、バークシャー・ハサウェイは2番目に大きい保有銘柄であるバンク・オブ・アメリカから大きなリターンを得られるかもしれません。

アメリカン・エキスプレス[AXP]:ポートフォリオに占める割合は6.6%

クレジットカード業界は、ほぼその誕生の時から不正行為と闘ってきました。業界最大手の1社であるアメリカン・エキスプレス[AXP]は、この終わりなき闘いにおけるAI技術の重要性を理解しています。

2020年に同社は、10年におよぶ開発期間を経て、不正行為を排除するための高度な機械学習システムを発表しました。同社によれば、この種のモデルとしては当時世界最大規模でした。最近では、社内にAmEx Digital Labs部門を設け、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための生成AIツールの実験を行っています。バーチャルアシスタントの「AskAmex」は、2018年にアメリカン・エキスプレスが買収した、旅行セクターに特化した生成AI会社Meziの技術を活用しています。

アメリカン・エキスプレスには富裕層の顧客が比較的多く、将来的に顧客ニーズに迅速に対応するコンシェルジュサービスにおいて、AIが果たす役割は大きくなる可能性があります。一方、不正行為がより巧妙になるにつれて、AI技術は今後も裏方でも大きく活躍するのではないでしょうか。バークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中で6.6%、つまり同社はアメリカン・エキスプレス株式の20%を保有していることになります。

コカ・コーラ[KO]:ポートフォリオに占める割合は6.2%

意外に思うかもしれませんが、世界最大の飲料会社であるコカ・コーラ[KO]はAIに高い関心を寄せています。6月に同社が生成AIを担当するグローバル責任者を任命したことは、コカ・コーラにとってAI技術が将来的に重要な役割を果たす可能性があると考えていることを明確に示しています。

コカ・コーラは先日、AIと共同開発した限定商品の「Coca-Cola Y3000 Zero Sugar」を発表しました。消費者がイメージする未来についてのデータを集め(色、味、感情など)、そのデータをAIモデルに入力したのです。同社の目標は、西暦3000年のコカ・コーラの味を再現することでしたが、答え合わせは未来の世代に任せることにしましょう。

さらに、コカ・コーラは最近、実写の映像とAIが生成したコンテンツを融合させた動画を使ったマーケティングキャンペーン「Masterpiece」も立ち上げています。こうした活動は、今後さらに拡大していくと思われ、バークシャー・ハサウェイは216億ドル相当のコカ・コーラ株を保有していることに満足するかもしれません。

ボイド・ゲーミング[BYD]:ポートフォリオに占める割合は0.9%

中国のボイド・ゲーミング[BYD]は、世界最大手の電気自動車(EV)メーカーの1つであり、バスやフォークリフトから乗用車まであらゆるEVを製造しています。

同社はエヌビディアのDRIVEプラットフォームを使用して、必要なハードウェアやソフトウェアを含むすべての自律自動運転機能を搭載しています。ボイド・ゲーミングは競合する技術を自社開発することに積極的ではありませんが、AIと自動化を生産プロセスに統合することに取り組んでおり、将来的に大きな価値をもたらす可能性があります。

同社はまた、フォークリフトの自律走行実験も行っており、これは乗用車を公道で走らせるのに比べると、リスクも責任も低いとみられます。今のところ、ボイド・ゲーミングはAIを事業の中心に置くのではなく、事業の周辺部分で導入しようとしているようです。とはいえ、ボイド・ゲーミングの戦略が成功すれば、ポートフォリオの0.9%を同社に投資しているバークシャー・ハサウェイは恩恵を受けると思われます。

アマゾン・ドットコム[AMZN]:ポートフォリオに占める割合は0.4%

アマゾン・ドットコム[AMZN]は、バークシャー・ハサウェイにとって最も直接的なAI投資先の1つですが、バークシャー・ハサウェイがアマゾン・ドットコムに初めて投資したのは、AI技術が花開く前の2019年でした。アマゾン・ドットコムには、世界最大のクラウドコンピューティング・プラットフォームであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)があり、同社はAI関連商品/サービスのポートフォリオ構築に本格的に取り組んでいます。

AWSは独自のチップを設計しており、法人顧客が使用し、構築することのできる大規模言語モデルも開発しています。アマゾン・ドットコムはまた、生成AIの主力スタートアップ企業であるアンスロピックに40億ドル投資することを発表したばかりです。これによりAI分野の進歩が加速するとみられます。

AIはクラウド上で開発、訓練、導入されるため、アマゾン・ドットコムは、現在ではポートフォリオのわずか0.4%を占めるにすぎませんが、いずれはバークシャー・ハサウェイにとって最も重要なAI関連投資の1つになる可能性があります。

スノーフレーク[SNOW]:ポートフォリオに占める割合は0.3%

スノーフレークもバークシャー・ハサウェイにとって、直接的なAI関連投資の1つと言えます。スノーフレーク[SNOW]はクラウドコンピューティング業界の革新的リーダーであり、多くの企業が同社のData Cloudプラットフォームを使ってデータを集約し、最大限の可視性と強力な分析を実現するのをサポートしています。現在は、より多くのAIツールを顧客に提供することを目指し、積極的に投資を行っています。

これまでも、自社の取り組みを加速させるために、複数の小規模スタートアップ企業を買収してきました。そのうちの1社であるニーバ(Neeva)は、一般ユーザーがプログラミング言語ではなく、自然言語を使って重要情報を見つけることができるように設計された検索ツールを開発しました。これは、技術スタッフに限らず、より多くの従業員が企業のデータから有益な情報を引き出せるようになることを意味します。

スノーフレークはまた、企業がたとえば契約書や請求書などの非構造化データ群から重要情報を抽出するのを支援する、「Document AI」という新たなツールを立ち上げました。この技術のおかげで、弁護士や会計士といった専門職の生産性が飛躍的に向上する可能性があります。

スノーフレークは、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオのわずか0.3%と、ほんの小さな割合であり、依然として赤字であるため、バークシャーの保有銘柄の中では高リスクの投資先の1つとなっています。

ゼネラル・モーターズ[GM]:ポートフォリオに占める割合は0.2%

自動車業界もAIから大きな恩恵を受ける可能性があり、ゼネラル・モーターズ[GM]のようなレガシー自動車メーカーは、テスラ[TSLA]のような新たな競合企業の技術的進歩に追いつこうと奮闘しています。

ゼネラル・モーターズ傘下で、自律走行車の開発を手掛けるスタートアップ企業であるクルーズ(Cruise)は、すでに米国内の主要3都市で事業を展開しています。AIを搭載した自動運転技術は、モビリティの未来を変える可能性を秘めています。

ゼネラル・モーターズはまた、グーグルの親会社であるアルファベット[GOOGL]と協力し、事業全体にAIを組み込もうとしています。グーグルの対話型AIは、すでにGM車の車載音声アシスタントに搭載されています。

バークシャー・ハサウェイは2023年に、低迷するゼネラル・モーターズ株の半分超を売却しており、現在はポートフォリオのわずか0.2%にすぎません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。バンク・オブ・アメリカは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。アメリカン・エキスプレスは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドットコム、アップル、ボイド・ゲーミング、バンク・オブ・アメリカ、バークシャー・ハサウェイ、エヌビディア、スノーフレーク、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はゼネラル・モーターズの株式および以下のオプションを推奨しています。コカ・コーラの2024年1月満期の47.50ドルコールのロング、ゼネラル・モーターズの2025年1月満期の25ドルコールのロング。モトリーフールは情報開示方針を定めています。