モトリーフール米国本社、2023年10月10日 投稿記事より

主なポイント

・eコマース事業以外にも、アマゾン・ドットコム[AMZN]は複数の急成長市場に参入している
・魅力的なバリュエーションにより、足元の株価は魅力的に見える
・常に規制当局の監視下にあることで、怖気づく投資家もいるかもしれない

アマゾン・ドットコム[AMZN]をめぐる多くの検討材料

多くの読者はアマゾン・ドットコム[AMZN]のサービスを利用したことがあるでしょう。事業の目覚ましい成功により、同社は投資先としても注目されています。しかし、株価は2023年に入って大幅に上昇しているものの、依然として過去最高値を33%も下回っています。

FAANG銘柄の一角を成すアマゾン株は、買い時でしょうか、売り時でしょうか、それとも今は保有を継続しておくのがよいでしょうか。投資家として知っておきたいことをお伝えします。

アマゾン・ドットコム[AMZN]が持つ複数の成長エンジン

アマゾン・ドットコムについて書かれたストーリーを読むと、成長が重要なテーマとなっています。投資の観点から見て特に印象的なのは、中核セグメントであるeコマース事業が全社の好調を牽引しているわけではないということです。確かに、オンラインショッピングは長期的なトレンドであり、アマゾン・ドットコムを将来にわたって推進し続けるでしょう。こうした状況を支えるのは、大規模に展開された物流拠点です。しかし、注目すべき分野が他に2つあります。

1つ目の分野がクラウドサービスのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)です。AWSは世界のクラウドコンピューティング市場のうち、売上高ベースで32%のシェアを握る、業界の圧倒的リーダーです。コンピューティング、ストレージ、解析を扱う能力を自社で構築することは、かつては同社にとって莫大なコストを要するものでした。しかし経営陣はこうしたサービスを世の中の他の企業に提供することに、ビジネスチャンスが広がっていると考えたのです。

AWSの2023年第2四半期の売上高は、前年同期比12%増の221億ドルでした。これまで見慣れていた数字と比べると伸び率は明らかに鈍化していますが、同社全体の増収率と比べると、依然として大幅な成長率を維持しています。さらに、AWSは第2四半期の全社の営業利益の70%を占めました。

2つ目の分野は、アマゾン・ドットコムのデジタル広告能力です。同社のeコマースサイトには8月の1ヶ月間で32億人が訪れており、消費者へのリーチと注目度は計り知れないものと考えられます。そのため、eコマースサイトは広告在庫の貴重な供給源となっており、アマゾン・ドットコムにとって収益性の高い事業ラインとなっています。第2四半期のデジタル広告売上高は、前年同期比22%増の107億ドルでした。これにより、アマゾン・ドットコムは、アルファベット[GOOGL]とメタ・プラットフォームズ[META]に次ぐ業界第3位のデジタル広告企業として、急浮上しています。

今後10年を展望すると、eコマース、クラウドコンピューティング、オンライン広告はいずれも力強い成長が見込まれ、それがアマゾン・ドットコムのさらなる成長を支えるはずです。

株価ピークからは13%安の今、利益確定の選択は早計か

これらの魅力的な成長特性を踏まえると、多くの人がアマゾン・ドットコムに注目し続けるでしょう。さらに魅力を高めているのは、株価がピークから大幅に下げた水準にあり、株価売上高倍率(PSR)が2.4倍であることです。足元のバリュエーションは、過去5年間の平均PSRを下回っています。そして、10月5日時点の株価は、9月14日に付けた52週高値から13%安の水準にあります。今はこの有力企業を買う好機なのかもしれません。

年初来で株価が大幅に上昇していることから、利益確定の選択肢が頭に浮かんでいる株主もいることでしょう。それも、もっともな考えです。売却して得た資金を、さらに魅力的な企業へ振り向けるという方法もあります。しかし、足元のアマゾン・ドットコムに買いの好機が訪れているという事実だけでも、今は売らない方が賢明かもしれません。

成功の代償として矢面に立つリスクは売り材料にも

注意深く見れば、アマゾン・ドットコムにも重大な売り材料がないわけではありません。同社は現在、独占禁止法違反をめぐって連邦取引委員会(FTC)と対立しています。FTCは、アマゾン・ドットコムが巧妙な方法で出店企業をプラットフォームに囲い込みつつ、消費者には高い価格を請求していると主張しています。

アマゾン・ドットコムは世界中の消費者や企業に対して非常に強い影響力を持っているため、常に規制当局の矢面に立たされています。これを、成功している企業の証だとして前向きに見る人もいれば、投資するにはリスクが高過ぎると捉える人もいるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。フェイスブックの元市場開発担当ディレクター兼スポークスマンであり、メタ・プラットフォームズのMark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerbergは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Neil Patelは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。