◆昨日、久しぶりにストラテジーレポートを更新した。前回のレポートの日付が9月9日だったから、実に半月ぶりである。この間に株も為替も大きく動いたが、その背景は従前からレポートで述べてきた通りで状況に変わりはない。すべて僕の想定通りだ。だから改めてレポートで伝えることもない。それが長い間レポートを更新しなかった理由である、とレポートに書いた。すべて言い訳である。

◆相場というものは日々変わる。もっと言えば、刻々変わる。変わっていないように見えて、変わっているものである。その微小な変化に気付けるか。微小な変化が勝負を分けることもある。急変の前触れとなることもある。そうした変化を察知するためには、マーケットを微に入り細に入り観察し続けるしかない。若い頃はノートに、ありとあらゆる指数、利回り、レートから商品価格に至るまでを毎日自らの手で記帳していたものだった。

◆ストラテジーレポートでは、テレビ東京の『出没!アド街ック天国』に言及した。さんざん話題となった「あの方」もかつてアシスタントを務めていた人気番組である。約20年も続く長寿番組だから、当然、何度も取り上げる街が出てくる。浅草、銀座、鎌倉などは10回程度は特集されているはずだ。しかし、そのたびに新しいスポットが紹介されるのだ。8月25日付け小欄でリンクを貼った2013年4月1日付けレポート『覚悟』で述べた通り、「街は変わりゆくものである。なぜなら、街とは人がつくるものであり、人は変わりゆくものだからだ。望むと望まざると、変わりゆかねばならないものだからである。」

◆あるビジネスマンが大学生の息子の試験問題を見て驚いた。彼の息子は、自分が卒業した大学、同じ経済学部で学んでいる。聞けば、教授は何年も試験問題を変えず、同じ問題を出題し続けているという。「何年も、どころじゃない。何十年も同じだ!」憤慨した彼は母校に恩師を訪ね、こう詰問した。「先生、この試験問題は私が学生の頃から変わっていません。いったい、経済学には『進歩』というものはないのですか!?」年老いた経済学者は優しく諭すようにこう云った。「いいんじゃよ、問題はずっと同じで。『正解』のほうが毎年変わるんだから」

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆