下向きの25日と上向きの75日移動平均線、どちらをブレイクするか

前回のコラムで、8月2日の取引開始前に格付け会社のフィッチ・レーティングスが米国の外貨建て長期債の格付けを引き下げたことから金利の上昇が嫌気され、日経平均株価は一気に5日移動平均線と25日移動平均線を下回ったことを解説しましたが、その後は5日移動平均線を挟んだ値動きとなる中、下向きの25日移動平均線と上向きの75日移動平均線に挟まれた状態となりました。

また、株価の水準を見ますとダブルトップのネックラインである6月27日の終値を下回ったままとなっており、上値を押さえられる状態となっているのが分かります。

このような状況から、25日移動平均線と75日移動平均線のどちらをブレイクするのかが、今後の株価動向を考える上で注目ポイントになると思われます。

25日移動平均線を上回って維持するようですと、5日移動平均線が上昇して25日移動平均線を上回り、ゴールデンクロスが発生し、株価のサポートになって上放れ期待が高まるのではないかと思われます。

しかし、75日移動平均線を下回って戻せないようですと、5日移動平均線と25日移動平均線が低下して75日移動平均線を下回るデッドクロスが発生するとともに、33,000円から32,000円のレンジ相場を下放れることが視野に入ってきますので、買いポジションを持っている投資家は、損失の発生や拡大に注意したいところです。

【図表】日経平均株価(日足)
出所:i-chartより株式会社インベストラスト作成

モメンタムの低下が続いた場合は要注意

そのような中、上昇と下落の勢いを教えてくれるモメンタムを見ますと、株価は25日移動平均線と75日移動平均線に挟まれた状態となり、ほぼ横ばいで推移しているにも関わらず、上昇と下落の勢いの判断の分かれ目となる0ラインを下回って低下が続いているのが分かります。

株価が、ほぼ横ばいで推移しているにも関わらず、モメンタムとその移動平均線であるシグナルの両方が低下を続けているのはなぜなのでしょうか。

特に8月15日は株価が反発しているにも関わらず、モメンタムとシグナルの両方が低下しており、イメージとは異なる状況になっているのではないでしょうか。

そこで、モメンタムが何によってつくられているのかをもう一度おさらいしたいと思います。モメンタムは、当日の終値とN日前の終値を比較し、その値はプラスであれば、上昇の勢いが強いとする一方で、マイナスになると下落の勢いが強いと判断しています。ここから言えることは、仮に株価が反発したとしても、N日前との価格差が縮まらなければ、モメンタムは上向きに変化しないということです。

例えば、N日前の株価が1,000円で、この時の当日の株価が900円だったとした場合、モメンタムは-100円となります。また、N日前の翌営業日の株価が1,100円で、当日の株価が950円だったとすると、株価は前日比で50円上昇していることから反発に転じていると考えてしまいます。

しかし、モメンタムは-150円となり、モメンタム(=価格差)は株価の動きとは逆にマイナス幅が拡大していることから、「戻りが鈍い」または「下落の勢いが強いまま」となっていると判断する必要があるのです。

したがって、モメンタムの考え方からは「反発している」とは言い難い状況なのです。
このような理由でモメンタムとシグナルの低下が続いていることを頭に入れた上で、今後の株価動向を見ていくことが、テクニカル的には重要になります。引き続き、モメンタムの動きに注目したいところです。