◆この歳まで生きてくるとちょっとやそっとのことでは驚かないが、さすがにこのニュースにはびっくりした。「ハローキティは猫でなかった」。ハワイ大学の文化人類学者クリスティン・ヤノ教授が、キティを「猫」と書いたところ、サンリオから「猫ではなく、女の子である」と指摘を受けたという。確かにサンリオのHPでハローキティのプロフィールを見ると、「明るくて優しい女の子」とある。夢はピアニストか詩人になることだという。この話の教訓は、いかにひとは「思い込み」が激しいかということである。
◆ひとには先入感や思い込みというバイアスがある。従来のファイナンス理論では説明し難い投資家の非合理的な行動を観察し、投資家心理に影響を与える様々なバイアスを研究する学問が行動ファイナンスである。この分野で、スティーブ問題といわれる有名な例題がある。
<スティーブはとても内気で控えめだけれど、いつも周囲の役に立っている。柔和で几帳面。整理整頓が得意で、細かいところにも神経が行き届く人である。さてスティーブはセールスマンか、図書館員か?>
◆この問いに対して、「図書館員である」と回答するひとが圧倒的に多い。しかし、世の中の人数的には図書館員よりセールスマンのほうが圧倒的に多くいるわけで、確率論でいえばスティーブはセールスマンである可能性が高い。
◆しかしハローキティを猫と思い込むなというのも無理はある。なにしろ、猫耳をして顔に猫のヒゲを生やしているのだから。そんな「女の子」は普通いない。おまけに身長は「リンゴ5個分」である。昨日の小欄で「ジャンボ宝くじの1等賞金4000万円」と書いたが、ケタがひとつ違って正しくは「4億円」の誤りでした。これも思い込みバイアスか。いやいや、これは単なる不注意。謹んで訂正させていただきます。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆