ゴールベースアプローチという考え方があります。個人の将来目標を設定し、そこに到達するために必要な運用を設計し管理していくものですが、提唱する金融機関側からすると単に商品を販売するだけではなく、サービスを提供するコンサルタントとして、ニーズに合わせ包括的なアドバイスをするためにお客様と共有する哲学とも言えます。

金融機関側の事情はさておき、運用についてこのように考えるのは大切だと思います。資産運用の目的や期間、方法は人それぞれでしょうし、隣の人と同じものを売り買いする必要はありません。興味や野心から資産運用をする場合はとにかく儲けるという大きな目標がありますが、老後への備えなど長期にわたる資産運用であればその目的・ゴールを明確にすることが推奨されます。

自分の将来設計をすると〇年までに□程度の資産が必要になる、そうするとどのような運用が必要か、年率何%か具体像が描けます。そしてそのリターンを得るためにどのような資産配分が良いのか、その際には通常各資産の過去実績が参考とされますが、将来を見据えて今後の見通しや景気サイクルの状況といった材料も考慮されて良いでしょう。

同時にそのリスクを取れるほどの許容度が自分にあるのか?定性的・定量的に判断する必要もあります。例えば将来設計したら二桁のリターンが毎年必要で、そのためには高リスクの運用が必要、ただしそこまでのリスクが取れるのか?想定される振れ幅が自分には許容できるのか?という点をクリアする必要があります。

そうして計画が出来上がればいざ運用開始となりますが、大切なのは定期的にパフォーマンスを振り返り、運用が自分の計画通りに進んでいるのかを確認することです。運用がうまくいっていれば自分の計画をより野心的に変えることもできますし、もしくは計画はそのままで運用スタイルをより保守的に変えることも可能です。また、前提となる各資産市場の前提に変化は無いか?時に検証は必要です。

この運用スタイルのメリットは市場変動に感情的に動かされないことです。投資家の資金フローと資産価格の関係をデータで見ると、価格上昇時にインフロー・価格下落時にアウトフローが確認されます。言い換えると高値買い・安値売りですし、これは相場の上げ下げに感情面で振り回された動きが大いに関係あるでしょう。一方で極力感情を排除し計画的な運用を継続していれば、値上がりした資産はポートフォリオのウェイトも大きくなるので売り、下がればウェイトを埋めるために買い、となります。

先日年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年度の運用実績を公表し、分散投資効果で3期連続の黒字となったこと、そして値上がり資産から値下がり資産へのリバランスを定期的に実施していることが示されました。計画を維持するための自然な動きと言えます。

一方でどこかのタイミングで流動性が必要な資産運用や、余裕資金でリスクの高いものに挑戦する、という部分もありますね。将来設計をコアに資産運用しながら、サテライトで目的別に運用をするという発想も大切ですし、しっかり整理する必要があります。

基本的に運用は長い付き合いになるものであり、日々の相場変動にやきもきせず計画的にストレスの無いものを目指したいです。