モトリーフール米国本社、2023年7月9日 投稿記事より

主なポイント

・生成AIをはじめ、人工知能における最新のイノベーションが世界を席巻している
・世界で最も成功している投資家の間でも、AIは注目されている
・富裕投資家が、AIブームから大きな恩恵が見込まれるメタ・プラットフォームズやアルファベットの株式を買い漁っている

ウォール街のエリートも注目する次世代のAI技術

人工知能(AI)は何十年も前から徐々に進化を遂げてきましたが、最近の進歩は特に世の中の注目を浴びています。ChatGPTをはじめとする次世代チャットボットの登場をきっかけに、企業は生成AIで可能となった生産性向上を実現しようと奮闘しています。こうした熱狂を目の当たりにした投資家は、利益を上げるチャンスを感じ取り、足元のAIゴールドラッシュの波に乗ろうと躍起になっています。

AI普及の次の段階は驚くほど広範囲にわたり、信じられないほどの利益をもたらすかもしれません。キャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメントは、さまざまなデータに基づき、AIソフトウェアが2030年までに14兆ドルの売上をもたらす可能性があると試算しています。モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスの予想はもっと保守的で、2030年までにそれぞれ6兆ドルと7兆ドルと予想しています。いずれにしても、機会は膨大です。

ウォール街の著名な富裕投資家も、目の前のAI革命に乗り遅れまいと、AI関連株を買い漁っています。こうした富裕投資家が大量購入している2つの銘柄を見てみましょう。

メタ・プラットフォームズ[META]はエコシステム全体でAIを活用

フィリップ・ラフォン氏は、1999年に5000万ドルで立ち上げたコーチュー・マネジメントを、今や運用資産残高150億ドルの世界的なハイテク株主力のヘッジファンドへと育て上げたことで有名になりました。

ラフォン氏は、テクノロジー業界を大きく変える構造的転換と、それによってもたらされる長期的追い風に着目しています。同氏はフィナンシャルタイムズ紙のインタビューで、「我々のビジネスで成功するためには、1,000個もの大きなアイデアは必要ありません。1つか2つの重要なアイデアがあれば充分で、そこからドミノ倒しが始まるのです」と述べています。

ラフォン氏の最大の保有銘柄を見れば、同氏が言う重要なアイデアの1つが分かります。コーチュー・マネジメントは2023年第1四半期に、メタ・プラットフォームズの株式を430万株買い増し、持ち分はそれまでの2倍以上の800万株超となりました。これは足元で23億7000万ドル相当であり、ラフォン氏のポートフォリオに占める割合は11%を上回ります。

メタがAI銘柄であるとすぐに認識できない人もいるかもしれませんが、同社の歴史を考えてみてください。同社は以前から、AIアルゴリズムを使って写真にタグ付けしたり、ユーザーに関連のあるコンテンツを表示したり、メタの売上の大部分を占めるデジタル広告を効果的にターゲティングしたりしてきました。しかし、最も興味をそそられるのは、未来のAIがメタにもたらす可能性です。

マーク・ザッカーバーグCEOは、6月上旬に開かれた社員総会で、「この1年間で、生成AIは本当に驚くべきブレークスルーを遂げ、質的に飛躍的な向上を示しました。今度は我々が、この技術を自分たちのものにし、さらに推し進め、自社のありとあらゆる製品に組み込む好機となっています」と語りました。これが何を意味するのか具体的には分かりませんが、メタが引き続き、自社の製品にAIを導入しようとしていることは明らかです。

さらに、広告市場が回復しつつあることから、ラフォン氏は間違いなく、近視眼的な投資家の狭い視野から利益を得るチャンスだとみているはずです。AIによってもたらされる追加の利益は、嬉しいボーナスにすぎないかもしれません。

アルファベット[GOOGL]の技術は、既にAIに支えられている

一般にはあまり知られていないかもしれませんが、チェース・コールマン氏はウォール街ではよく知られた人物です。コールマン氏はわずか24歳の時に、伝説的ヘッジファンド・マネジャーで、メンターでもあったジュリアン・ロバートソン氏から資金を託され、タイガー・グローバル・マネジメントを設立しました。コールマン氏は創業資金2500万ドルからスタートし、現在の運用資産残高は約110億ドルに上ります。

コールマン氏は2020年に、S&P500指数の年間上昇率16%の3倍に相当する48%のリターンを上げ、その年に最も稼いだヘッジファンド・マネジャーとしてトップにランクされました。同氏は現在、フォーブス誌による世界長者番付で247位にランクされ、資産額は85億ドルと推定されています。

タイガー・グローバル・マネジメントは以前からアルファベットの株式を大量に保有していましたが、最近、アルファベット株を460万株買い増し、持ち分は2倍以上の830万株超となりました。現時点で、これは10億ドル以上に相当し、コールマン氏のポートフォリオの8%近くを占めています。

コールマン氏は、大手ハイテク企業はAIブームから最も大きな恩恵を受けるものの、忍耐が必要であると考えており、「企業がAIに投資し、どのように活用するかという観点で考えてみてください。それは徐々に進むものであり、辛抱強く待つことが必要です」と述べています。

アルファベットは以前から、検索技術や広告のターゲティングを支えるのにAIを活用していますが、同社が開発したパスウェイズ大規模言語モデル(PaLM)の最新版は、同社のAIへの取り組みが次の世代に進んでいることを表しています。同社によれば、PaLMの訓練には多くの言語だけでなく数学や科学の論文も使われ、それによってシステムは「慣用句、詩、なぞなぞといった独特のニュアンスを持つ文章を理解し、生成し、翻訳することができるようになり、今では上級レベルの言語能力試験に合格できる」言語能力を持っているとのことです。

確かにAIも魅力の1つかもしれませんが、アルファベットの最大の魅力の1つは、世界市場の93%を支配するグーグルの圧倒的な検索エンジンでしょう。これがデジタル広告におけるアルファベットの優位性を支えており、世界市場で30%のシェアにつながっているのです。さらに、グーグルのクラウドインフラ事業であるグーグル・クラウドは、米調査会社カナリスのデータによると、「ビッグ3」の中で最も急速に成長しています。

とはいえ、コールマン氏がアルファベットの持ち分を大きく増やした理由は、広告市場全体の回復に賭けているためと思われます。AIへのエクスポージャーは、ケーキの上の飾りのようなものかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。フェイスブックの元市場開発担当ディレクター兼スポークスマンであり、メタ・プラットフォームズのMark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerbergは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Danny Venaは、アルファベット、メタ・プラットフォームズの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、ゴールドマン・サックス・グループ、メタ・プラットフォームズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。