中国当局の金融緩和と財政投資拡大への期待、そして世界的な株価動向に揺れる

2023年6月の中国本土市場・香港市場は軟調な動きとなっています。2023年6月2日終値~7月3日までの騰落率は、上海総合指数が+0.4%、香港ハンセン指数が+1.9%となっています。

上海総合指数は中盤までは緩やかな回復基調が続いていたのですが、100日移動平均線が頭を押さえつける形になって6月19日から大きく下落。一旦200日移動線を株価が割り込むまで下落したのですが、その後に急反発をしています。

香港ハンセン指数も同様の株価推移ですが、こちらは長期的に見ると緩やかに株価が下落してきており、200日移動平均線の向きも下向きで、長期には下落トレンドが続いていることを示唆しています。

上海総合指数、ハンセン指数が共に6月中盤までは緩やかな回復基調となっていた理由は、中国当局の金融緩和と財政投資拡大への期待感からによるものです。

中国人民銀行(中央銀行)が7日物リバースレポ金利を引き下げたことで、景気を支えるためにさらなる金融緩和が実施されるとの期待が高まりました。広範な景気刺激策が検討されていることも関係筋の話として伝わっています。

しかし、その後に下落しているのは、世界的な株価の流れによるものです。米国の中小型株など、GAFAM+テスラ+エヌビディアのいわゆるメガ7以外の株価が世界的に大きく調整した流れと重なります。

そして、この調整は世界的にもう少し続くかと思われたのですが、すぐに反発となり、中国株もその流れに乗って、6月末~7月頭に大きく上昇となっています。さらに言えば中国株には政策期待や米中対立の緩和期待もありました。

李強首相が主宰した中国国務院(内閣)の会議に関する発表で、家計消費を促進する計画が明らかになったことや、ジャネット・イエレン米財務長官が7月6日に中国を訪問し、政府高官と会談する予定となっていることなどの材料が株価を後押しする材料となりました。

中国の経済指標は軟調。政策期待が高まる中、今後の見通しを図る3つのポイント

中国の経済指標を見ると、5月の鉱工業生産は前年同期比3.5%増(市場予想3.5%増、前月実績5.6%増)、小売売上高が前年同期比12.7%増(市場予想13.7%増、前月実績18.4%増)、固定資産投資が年初来で前年同期比7.2%減(市場予想6.7%減、前月実績6.2%減)、6月の中国国家製造業景況感指数が49.0(市場予想49.0、前月実績48.8)、中国国家非製造業景況感指数が53.2(市場予想53.5、前月実績54.5)、Caixin中国製造業景況感指数が50.5(市場予想50.0、前月実績50.9)となっています。

総じて予想よりも軟調な結果が多く中国経済のスローダウンが示されています。だからこそ、政策期待が高まっているとも言えます。今後の見通しについては、大きく分けると3つのポイントがあると思います。

1.株価上昇の波

1つは世界的な過剰流動性による株価上昇の波が続くかどうかです。メガ7以外の(中国株も含めた)国やセクターが上昇し、セクターローテーションのような形で再びメガ7が上昇していくという流れが続けば、この過剰流動性による買株価上昇は思ったよりも長く続くことになり、中国株もその恩恵を受けられるでしょう。反対にメガ7以外の上昇が早く終わってしまうようなら、再び調整基調に戻りそうです。

2.中国当局の金融政策と財政政策

2つ目は中国当局の金融政策と財政政策です。前述のように明らかに中国経済はスローダウンしているところで、金融緩和と財政投資の拡大は続いていくのではないかとみられ、大きな政策が発表されれば株価の大きな後押しになります。

3.米中対立の行方

最後3つ目は米中対立がどうなるかです。融和の方向に向かえば、中国株は大きく上昇する可能性がありますが、なかなか根深い問題ですので、すぐには解決されず、当面株価の重しとなり続ける可能性もあります。