モトリーフール米国本社、2023年6月13日 投稿記事より

主なポイント

・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは、株式市場での長期投資で知られている
・通常、新興テクノロジーはバークシャー・ハサウェイのポートフォリオに含まれることはない
・しかし、現在保有するアマゾン・ドットコムとスノーフレイクの2社はAIへの貴重なエクスポージャーとなっている

バークシャー・ハサウェイが長年保有している2銘柄は、近いうちにAIの最前線に立つ可能性がある

ウォーレン・バフェット氏は、世界で最も称賛される投資家の1人です。株式市場に対する長期的アプローチを背景に、揺るぎない資産を築いています。同氏のアプローチは、事業内容を理解し、成長性と収益性を確実に生み出す企業に投資するというものです。

同氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは、バフェット氏と同様のアプローチに基づいて3420億ドルのポートフォリオを運用していますが、時に、バフェット氏の専門分野以外の投資機会に足を踏み入れることがあります。

そのうち、以下に挙げる2社は現在、人工知能(AI)の開発を積極的に進めており、バークシャー・ハサウェイは、両社がこの新しく革新的な業界へ参入するのを最前線で見守っています。今投資するとしたら、どちらの企業が有望なのでしょうか。

アマゾン・ドットコム[AMZN]

アマゾン・ドットコムは、eコマース、クラウドコンピューティング、デジタル広告といった複数の分野で圧倒的存在感を持つ、非常に多角的な企業です。バークシャー・ハサウェイは2019年に初めてアマゾン・ドットコムに投資し、現在では13億ドル相当に上る株式を保有していますが、バフェット氏はたびたび、同社への投資機会をもっと早く見いだせなかったことへの後悔を口にしています。

とはいえ、アマゾン・ドットコムの株価には、依然として大きな上昇余地があると思われます。アンディ・ジャシーCEOは2023年第1四半期に、同社がすべての事業部門を大規模言語モデルの上に構築する意向であることを明らかにしました。オンラインショッピングから、広告、エンターテインメントに至るまで、顧客エクスペリエンスを完全に作り変えるというのです。

その上、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の長年のパートナーである半導体大手のエヌビディア[NVDA]は現在、アクセラレーテッドコンピューティングやAIトレーニングに使われる最も強力なデータセンター向けチップを製造しています。アマゾン・ドットコムが最新のEC2 P5クラウドインフラを立ち上げるのに先立ち、両社は先日、新たな提携に合意しました。これによりAWSの顧客は、画像処理装置の数が10,000から20,000にスケールアップした、スーパーコンピューター並みの性能にアクセスすることができるようになり、企業は商用化された最先端のAIモデルを訓練することができるようになります。

eコマースの話に戻ると、アマゾン・ドットコムは自社のフルフィルメントセンターに52万台の完全自律型ロボットを配備しています。これほどの規模でロボットを大量導入している企業は他になく、またAIの進歩により、これらのロボットは人間の2.5倍のスピードで商品のピッキングと梱包を行うことができます。もしアマゾン・ドットコムがロボティクス製品を他社に販売することになれば、2027年までに9兆ドルの市場規模が見込まれる業界に参入することになります。

アマゾン・ドットコムの2022年売上高は5,140億ドルで、アップル、マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベットを上回りますが、時価総額ではこれらの企業を下回ります。今後10年間で、アマゾン・ドットコムの企業価値は5兆ドルに達する可能性があり、バフェット氏も莫大なリターンを手にする可能性があります。投資家として、これに参加しない手はありません。

スノーフレイク[SNOW]

クラウドコンピューティング企業のスノーフレイクが2020年後半に上場したのと同じころ、バークシャー・ハサウェイは同社に約7億3000万ドルを投資しました。この企業は、ハイテク業界と新規株式公開(IPO)銘柄という、バフェット氏が通常回避するカテゴリーに属する企業です。そのため、バフェット氏ではなく、バークシャー・ハサウェイの別のポートフォリオマネジャーが投資を決めたと思われます。

スノーフレイクは、組織の縦割り構造によるデータのサイロ化を解消することを目指した「Data Cloud」を開発した企業です。企業はオンラインでビジネスを展開するために、クラウドコンピューティングにこれまで以上に依存するようになっていますが、生み出される膨大なデータは、部門別、あるいは異なるプラットフォームに保管されていることも少なくありません。Data Cloudは、データを1ヶ所に集約することでデータを把握しやすくし、また強力な分析ツールによって、組織が有益な洞察を引き出すのをサポートします。

データとAIは密接な関係にあるため、多くの顧客がAI、機械学習、データサイエンスのワークロードを管理するためにスノーフレイクを利用していても意外ではありません。2024年1月期第1四半期(2~4月期)の顧客数は1,500社を超え、前年同期比91%増となりました。

スノーフレイクは最近、大規模言語モデルに基づいて構築されたAI検索ツールを開発したNeevaという小規模の企業を買収しました。通常、スノーフレイクのプラットフォームにアクセスし、自社のデータから導き出される独自の洞察を間近で見るのは開発者です。しかし、Neevaを利用することにより、技術者以外の従業員もプロンプトの使い方を学べば、ビジネスプロセスを改善するための有益な情報を得ることができるようになります。

現在、バークシャー・ハサウェイが保有するスノーフレイクの持ち分は10億ドル強ですが、2021年11月に同社株価が史上最高値を付けた時には、今よりも約130%高い価値がありました。2022年のハイテク株売りで株価は急落しましたが、増収率が急速に鈍化していることも株価下落に追い打ちをかけました。

2~4月期の売上高は前年同期比48%増の6億2,400万ドルでしたが、1年前の85%増と比べると大幅な減速です。今回の決算内容を受け、会社側は2024年度の通期売上高ガイダンスを27億ドルから26億ドルに下方修正し、投資家の失望を招きました。

スノーフレイクの株価は過去最高値から56%安の水準にありますが、それでもクラウド業界の同業他社と比較すると、依然として高いバリュエーションで取引されています。そのため、バークシャー・ハサウェイの投資は今のところプラスリターンとなっていますが、ここからさらに下落する可能性もあります。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットの元CEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドットコム、アップル、バークシャー・ハサウェイ、マイクロソフト、エヌビディア、スノーフレイクの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。