始動は7月3日。投資家の関心高まるJPXプライム150指数

JPXプライム150指数への投資家の関心が高まりつつある。東京証券取引所ではPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して是正を求めている他、この延長線上でROE(株主資本利益率)の改善を進める方向性も打ち出している。

JPXプライム150指数はこれらをクリアした150社で構成されるため、いわばプライム市場の優良株上位150銘柄パッケージのような存在と言える。5月26日には具体的な構成銘柄も発表された。ただし、優良株を対象とした新指数への期待が高まる中、課題を指摘する声も少なくない。

JPX(日本取引所グループ)傘下のJPX総研は、3月末に新指数「JPXプライム150指数」を2023年7月3日から算出を開始すると発表した。これは2022年4月に発足した新たな市場区分に対応した投資家ニーズを勘案したもの。東証プライム市場に上場する銘柄を対象とし、その価値創造に着目して銘柄を選定するとしている。

東証ではPBR1倍未満の企業に是正要請を出している。ただ、東証プライム市場において、PBRが1倍を超えている上場企業が約半数にとどまっている状況だ。

発表資料によれば、こうした状況を踏まえ、今回、プライム市場に上場する時価総額上位銘柄より、(1)ROEと株主資本コストとの差である「エクイティスプレッド」(2)株価による市場評価であるPBRという価値創造を測る2つの指標を用いて選定した銘柄を「価値創造が推定される我が国を代表する銘柄」と位置付け、条件を満たした銘柄で構成される株価指数「JPXプライム150指数」を開発することにしたとしている。

なお、エクイティスプレッドとは、株主資本コスト(株主からの出資によって調達した資本に必要とされるコスト)を上回る利益をどの程度実現したか測定する指標を指す。具体的にはROEと株主資本コストの差分として定義される。

投資家(株主)の最低限の期待リターンである株主資本コストに対して、事業活動の結果得られたリターンであるROEが顕著に上回れば、市場から高い評価(高PBR)を得ることが可能になる。

JPXプライム150指数銘柄の選定方法

銘柄の選定方法は定期入れ替え基準日のプライム市場の時価総額上位500銘柄を対象とした上で、以下の基準で選び出す。

(1)推定エクイティスプレッド基準

推定エクイティスプレッドの上位75社を選定(狙い:財務実績上、価値創造が推定される企業を選定)

(2)PBR基準

(1)以外の銘柄で、PBRが1倍を超える銘柄のうち、時価総額上位75社を選定(狙い:市場評価上、価値創造が推定される企業を選定)
年に1回、8月に銘柄入れ替えを実施する(選定の基準日は6月末)。TOPIX(東証株価指数)と同じ浮動株時価総額加重型で算出する。

JPXプライム150指数を彩る構成銘柄

JPX総研は5月26日に、新指数の構成銘柄を発表した(※)。

構成銘柄のPBRの中央値は2.6倍で、TOPIX(東証株価指数)の同1.0倍を大きく上回っている。また、ROEの中央値は15.2%で、TOPIXの同7.7%を凌駕している。セクターとしてはTOPIXに比べて、電気機器や医薬品、情報通信の組み入れ比率が高く、銀行や輸送用機器、不動産が低くなっている。

JPXプライム150指数のウエイト上位はソニーグループ(6758)5.6%、キーエンス(6861)4.2%、日本電信電話(9432)3.3%、第一三共(4568)、武田薬品工業(4502)2.5%になる。

それに対し、TOPIXはトヨタ自動車(7203)3.5%、ソニーグループ3.0%、キーエンス2.2%、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、日本電信電話1.8%である。

期待と課題が交錯。今後、優位性を示すことはできるか

PBRやROEを見る限り、資本効率の高い銘柄が選ばれており、JPXプライム150指数は優れた指数ともみられる。大手証券では「150に採用されることがプライム市場での勝ち組の証になる」と前向きの評価がある。

一方で、今回の構成銘柄にはPBR1倍割れのトヨタや三菱UFJフィナンシャルグループは選ばれていない。選定条件を満たしていないので当然ではあるが、市場では「指数としてあまり普及していない“JPX日経インデックス400”の二の舞になりかねない」との声もある。

JPX日経400はROEが高く、社外取締役の選任など「投資家を重視する経営指標」を基準に選定したが、既にROEが高い銘柄を選んだことで指数としての優位性を示すことができていない。JPX150も既にPBRや資本効率の高い銘柄で構成されている。

市場では「株価妙味があるのは、PBRやROEが低めで、これから改善される企業群」との指摘がある。かつて優良株のパッケージとされた「日経300」はその存在すら知らない投資家が多い。

なお、バックデータではTOPIXとJPX150の値動きに明確な差はみられていないという。新指数が定着するかは流動的な面が多いと言えそうだ。

(※)JPXプライム150指数構成銘柄(東京証券取引所)
20230526-02.pdf (jpx.co.jp)