先週、S&P500は0.2%の下げと1週間を通しほぼ横ばい、ナスダック100は0.61%の上げで終わりました。市場のボラティリティは鈍くなり、株式は狭いレンジで取引されました。

このところ米国株式市場では、低いボラティリティが続いています。これは市場が下落することへの安心感や恐れが少ないことを示唆しています。前の週に大きなニュース(アップルの決算発表、雇用統計、FOMC)や不安があったことを考えると、このような動きは驚くべきものではありません。市場が不安から一息つく時期に入っているのかもしれません。

アルファベット株上昇、グーグルの生成AIを好感

株価の上昇が目立ったのはアルファベット(GOOGL)です。同社は、5月10日に開催された開発者向けイベント「Google I/O 2023」で、生成AIが検索、マップ、ワークスペース、写真、クラウドコンピューティング、Android端末にどのように統合されるかを披露したことが好感され、同社の株価は1週間で11.3%上昇し、ナスダック100の上げに貢献しています。

2023年2月に入りマイクロソフト(MSFT)が同社の検索エンジン「Bing(ビング)」にAI技術を搭載する方針を明らかにしたことで、これまで世界の検索市場でほぼ93%のマーケットシェアを独占していたグーグルの牙城が崩れるとの見方もあり、株価が下落する局面もありましたが、グーグルも負けてはいません。

同社は、自社の生成AIツールをソフトウェア開発者に提供することで、マイクロソフトの人工知能スタートアップOpenAIへの投資に対抗することを狙っています。また、グーグルは、生成AIが検索に追加されることで、広告がどのように進化していくかを説明しました。

グーグルは、5月23日に開催される「Google Marketing Live」で、生成AIを活用した広告戦略の詳細を発表する予定です。また、今回の「Google I/O 2023」では、同社初の折りたたみ式携帯電話「Pixel Fold」も公開しています。

ツイッターの新CEO発表、マスク氏はテスラ経営により専念

5月12日、テスラのイーロン・マスクCEOは個人で買収したツイッターの自身の後任となるCEOを発表しました。マスク氏は2022年10月に440億ドルでツイッターを取得しましたが、それ以来、マスク氏は自分の投資を守るために同社の立て直しに集中し、テスラの株主はスペースXだけでなく、今度はツイッターのCEOまで兼任し、テスラを見放したのではないかという見方も浮上しました。テスラは強力なビジネスの基盤を持つにも関わらず、同社の株価は2022年に65%下落しました。

マスク氏は、景気の低迷によりツイッターの広告主が慎重になった時期に、広告への依存度を減らすことを目指していましたが、今回後任に決まったのはNBCユニバーサルでグローバル広告・パートナーシップ担当会長を務めるリンダ・ヤッカリーノ氏です。この人事を見ると、ツイッターが再度広告への依存度を高める可能性があることを示唆しています。

テスラの株主にとって良かったのは、今回ヤッカリーノ氏を採用したことで、マスク氏はツイッター上でテスラの経営により専念できるとコメントしたことでしょう。

今週注目の米国企業の決算発表

第1四半期の決算発表は終盤に近づいています。先週5月12日(金)の段階でS&P500採用企業のうち457社が決算発表を終えています。これまでのところ前年同期比で3.94%の減益となっていますが、4月の半ばの予想では7.5%の減益であったことを考えると、前回と同じく第1四半期の決算発表は市場が恐れていたほど悪くなかったと言えるでしょう。

今週はウォールマート(WMT)、ホームデポ(HD)、ターゲット(TGT)など主要小売り企業の決算発表が行われる予定です。米国の消費動向を確認する良い機会となります。

今週、注目の決算発表は以下の通りです。

5月16日(火):ホームデポ(HD)、ストラタシス(SSYS)

5月17日(水):ターゲット(TGT)、ティージェイエックス・カンパニーズ(TJX)、シスコシステムズ(CSCO) 

5月18日(木):ウォルマート(WMT)、アプライド・マテリアルズ(AMAT)、ロス・ストアーズ(ROST)

5月19日(金):ディア(DE)