主なポイント

・次世代チャットボットの登場は人々の心を捉えている
・これらのシステムの能力は、事実との戦いによって、発揮しきれていない
・エヌビディアはチャットボットが逸脱しないようにする「ガードレール」を開発

チャットボットにまつわる信頼性問題をめぐり、エヌビディアが解決策を考案したと発表

2023年は人工知能(AI)の年だと言われています。長年積み重ねられてきた進歩が、ここにきてようやく花開いたのかもしれません。2022年末に登場したChatGPTは世界を席巻し、2023年1月には月間アクティブユーザー数が1億人に達するなど、コンシューマー向けアプリ史上最速のペースで普及しています。

その後、マイクロソフト(MSFT)がChatGPTの生みの親であるオープンAIに130億ドルを投資するとの報道が流れ、興奮は熱狂に変わりました。これをきっかけに、AIの専門知識を持つ他の企業も、自社の次世代チャットボットを市場投入しようと躍起になっています。

しかし、こうした進歩を妨げる問題も発生しています。ChatGPTと、アルファベット(GOOGL)が発表したグーグル・バードでテストを行ったところ、これらのシステムには固有の問題があることが判明しました。ニューヨーク・タイムズ紙によると、これらのシステムは時に、「無関係、無意味、または事実と異なる」回答をする可能性があることが明らかになったのです。この重大な欠陥は「幻覚」とも呼ばれ、画期的と思われるこれらの進歩に疑問を投げかけています。

この問題に対する解決策について自信を示したのが、エヌビディア(NVDA)です。

エヌビディアが提供する解決策

エヌビディアで応用研究担当のバイスプレジデントを務めるジョナサン・コーエン氏は4月25日に投稿したブログで、チャットボットが空想や明らかな虚偽情報に逸脱してしまう問題を軽減するために、同社が編み出した解決策の詳細を明らかにしました。同氏によれば、エヌビディアが開発したNeMo Guardrails(ニーモ・ガードレール)は、チャットボットが「軌道から外れない」よう支援することを目的とした、「新しくリリースされたオープンソースのソフトウェア」です。

このソフトウェアは、ルールに基づくシステムを組み込む方法をアプリ開発者に提供するもので、チャットボットが誤った情報を発するのを防ぎ、「正確で、適切で、話題に沿って、安全な」回答となることを確保する、と同氏は書いています。4月24日遅くに行われた報道陣向けのブリーフィングで、コーエン氏は、ニーモ・ガードレールは「幻覚を検知し、抑制する」ことができると述べました。

同氏はさらに、「アプリを開発する中で、『誰かがこの話題について話したら、内容に関係なくこのように回答せよ』というスクリプトを書けば良いのです。言語モデルがプロンプトに従うか、あるいはあなたの指示に従うかを信頼する必要はありません。どのように対応するかは、ガードレールシステムの実行ロジックにハードコードされます」と語りました。

こうした問題は、システムが訓練される方法に起因しています。チャットボットは、ユーザーと大規模言語モデル(LLM)との間のインターフェースであり、LLMはインターネット上で公開されている膨大な量のデータを使って訓練されています。問題は、収集されたデータすべてが事実に照らして正確とは限らず、意見や偏見、根拠のない結論が含まれている可能性があることです。その結果、チャットボットの返答が本筋から大きく逸脱したり、非論理的、攻撃的、あるいは極めて不快な内容になったりするケースがあるのです。

エヌビディアのソリューションが有効であることが証明されれば、そうした問題はすべて過去のものになるかもしれません。

エヌビディアにとってのメリット

エヌビディアには、未来を切り開く手助けをすることに大きな動機があります。AIが広く普及すれば、クラウドコンピューティングやデータセンターで使われる半導体や複雑なAIモデルを訓練したり動かしたりするための半導体を、提供する同社にとって明らかに好材料です。

経営陣は、AIエンタープライズ・ソフトウェアはエヌビディアにとって1500億ドルの市場機会をもたらし、チップとシステムはさらに3億ドルを生み出す可能性があると見積もっています。同社にとって、すべてを合計した最大市場規模は約1兆ドルに上り、だからこそ、同社はAIの発展を望んでいるのです。しかし、この先の機会はエヌビディアだけにとどまりません。

AI開発の次の段階

資産運用会社アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシーのキャシー・ウッドCEOが先日発表した年次レポート「Big Ideas 2023」の結論は、驚愕の内容でした。レポートには、ソフトウェア開発者が、新たなソフトウェアの開発によってもたらされる価値のわずか10%でも収益化することができれば、AIの進歩は14兆ドルの追加収益と90兆ドルの企業価値を生み出す可能性がある、と書かれていました。

AIは、次世代のハイテクの進歩を後押しする鍵を握っているかもしれませんが、AIが広く普及するかどうかは、ユーザーがこれらのAIモデルから有益で、正確で、信頼できる回答を得られるかどうかにかかっていると言えるでしょう。

エヌビディアの技術は、未来の進歩が軌道から外れないようにするのに役立つかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Danny Venaは、アルファベット、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、マイクロソフト、ニューヨーク・タイムズ、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。ニューヨーク・タイムズの2023年4月満期の38ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。