米ドル/円場のトレンドが見えなくなってきました。トレンドが発生するタイミングとは?そして、何が米ドル円/相場を大きく動かす材料となるのでしょうか。

揺れる米国の利上げ局面、方向感を失う米ドル/円相場

米消費者物価指数(CPI)は9ヶ月連続で低下。インフレ鈍化が顕著となってきたことに加え、3月に起こった米国の銀行破綻を発端とした金融システム不安が、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げスタンスを軟化させるとした場合、現在の市場のコンセンサスは、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、あと1回0.25%の利上げを最後に利上げサイクルが終焉するというものです。

さらにFOMC関係者が幾度となく、高金利状態を長期間維持するとアナウンスしても、金利先物市場では2023年秋口からの利下げ開始を織り込んでおり、これがこの先の米ドル安を予想する向きの支援材料となっています。

しかし、足元では比較的堅調な米経済指標が3月の金融システム不安で急低下した米市場金利の反発を促しており、米ドル/円相場は下値を切り上げています。絶対的な日米金利差から見れば、米ドル売りはスワップコスト負担が大きく、本腰を入れて米ドル/円ショートを持ち続けられないのが実情で、米ドル/円相場はすっかり方向感を失ってしまいました。

相場に影響を与える、トレンド発生に関わる2つの要因

相場が大きく動くのは、想定外のことが起きた時。サプライズは大きなトレンドを生むきっかけとなります。

1.現在のコンセンサスである5月の利上げが見送られた場合

足元では次回5月2~3日のFOMCで、0.25%の利上げが行われるとの観測が市場ではコンセンサスとなっており、金利先物市場では5月利上げが80%以上の確率で織り込まれています。

ところが4月15日、イエレン米財務長官は「最近の銀行破綻を受けて金融機関が慎重になり、融資を一段と引き締める可能性を指摘、追加利上げが不要になる可能性がある」と述べました。もし、市場が5月の利上げを織り込んだ形で現在の水準にあるなら、利上げがなかった場合、米ドル売りが大きくなる可能性は否めません。

また、利上げがあるというのが現状ではコンセンサスですので、実際に利上げが実施されたとしても、これが新たな米ドル買い材料となることはないでしょう。材料出尽くしで、米ドルロングの利食い場になると考える向きも多そうです。

2.年内利下げ開始の織り込みが後退し、年内利下げが実施されなかった場合

インフレ率がさらに低下するのか、労働市場が急激に冷え込むリスクがあるのか、銀行破綻などの金融危機からリセッションに陥るリスクが高まったからなのか、その理由は定かではありませんが、債券市場は9月のFOMCから利下げが開始されることを織り込んでいます。

しかし、これから発表される経済指標が想定より良好で、リセッションに対する警戒が後退すれば、利下げの必要は生じません。利下げ織り込みが解消されていく過程では、銀行破綻の金融不安で過度に低下した米ドル金利が上昇することになるでしょう。その場合は米ドル金利上昇にともなって、米ドル高のトレンドが長期化する可能性が大きいと考えられます。

短期的には5月のFOMCをきっかけに米ドル安が加速する可能性が、そして中長期的には、過度に低下してしまった米ドル金利が反発上昇する過程で、米ドル高の可能性があるのではないかと考えています。