モトリーフール米国本社、2023年2月19日 投稿記事より

主なポイント

・アマゾン・ドットコムのAWSは、今後ますます激しい競争にさらされる可能性がある
・メタ・プラットフォームズのメタバースはAIに大きく依存するとみられるが、投資家の関心は低い
・AIの台頭は、ファイバー・インターナショナルのビジネスモデルを脅かす恐れがある

1億人に上るChatGPTユーザーは大きな脅威である

人工知能(AI)は、人類と機械が戦争を繰り広げた映画「ターミネーター」の時代からずっと考えられてきたテーマでした。しかし、AIを搭載したチャットボット「ChatGPT」の人気が一気に高まったことで、ウォール街はテクノロジーに対する認識を新たにしています。ChatGPTとその関連技術が追い風となる企業がある一方で、逆風になる企業もあります。

創造的破壊はいつの時代にも潜んでおり、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、ファイバー・インターナショナルなどの企業にとって、不安は常に存在します。これらの企業は、迫り来るAI革命に対して脆弱である可能性があります。

アマゾン・ドットコム:オープンAIの人気はAWSの成長を脅かす可能性がある

オープンAIが開発したChatGPTは、テクノロジー業界にセンセーションを巻き起こしています。公開からわずか2ヶ月で、ユーザー数は既に1億人に達し、史上最速で成長しているアプリです。これは、アマゾン・ドットコムにどのような影響を及ぼすのでしょうか。現在、世界の市場をリードしているのは、アマゾン・ドットコムのクラウドプラットフォームであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)です。AWSはアマゾン・ドットコムの稼ぎ頭であり、2022年の同社営業利益のすべてを担っています。

クラウドプラットフォームは、基本的にインターネット上のインフラです。企業は、お金を払って自社のコンピューティングシステムやサーバーを維持する代わりに、AWSのようなクラウドプラットフォームから、必要に応じてリソースをレンタルすることができます。オープンAIの爆発的な人気は、AIツールを将来のアプリやビジネスに組み込もうとしている開発者にとって頼れる存在になるかもしれません。しかし、アマゾン・ドットコムにとって問題なのは、クラウドサービスの「アジュール」を展開する競合のマイクロソフトがオープンAIと提携し、同社に巨額の投資を行っていることです。

マイクロソフトとオープンAIの提携で重要な点は、アジュールがオープンAIの独占的クラウドプロバイダーとなり、研究、製品化、APIサービスといったすべてのワークロードを支えるという点です。言い換えれば、アジュールは、オープンAIが今後手掛けるあらゆるものに幅広く関与し、恩恵を受けるということです。今後、開発者がクラウドプラットフォームとして、オープンAIを理由にAWSではなくアジュールを選ぶようになれば、アマゾン・ドットコムの利益成長に大きな打撃となる可能性があります。

アマゾン・ドットコムもAWS内にある程度のAI機能を備えていますが、テクノロジーの世界ではしばしば「一人勝ち」の構図が展開されるため、ChatGPTの記録的成長は憂慮すべき事態です。クラウド市場の全体的な成長機会によってAWSも成長し続けるとみられますが、投資家は、アマゾン34%、マイクロソフト21%という現在の市場シェアの変化を注視する必要があります。市場シェアの低下は営業利益の減少を意味し、最終利益の大部分をAWSに依存しているアマゾン・ドットコムにとって問題となります。

メタ・プラットフォームズ:投資家を悩ませるAI関連株

2022年第4四半期に、世界全体で約37億人が少なくとも月1回、メタ・プラットフォームズが運営するサイトを利用しました。誰もが羨む偉業ですが、この人数は既に世界人口の47%に達しています。ソーシャルメディアを意識的に避けている人々や、プラットフォームを利用する技術にアクセスできない人々を考えると、メタ・プラットフォームズがこれ以上増やせる新規ユーザーは極めて限られています。

そのため、メタ・プラットフォームズはさらなる成長の原動力として、メタバースと呼ばれる、AIを活用したデジタル空間に着目しています。実際、同社のメタAIは、新型コロナウイルスの蔓延予測から、人間の交渉術の模倣する「キケロ」まで、幅広い分野で成果が報告されています。こうした成功により、メタ・プラットフォームズはAI分野における有力企業となる可能性があります。

残念ながら、研究開発費が急増する傍ら、売上高と利益が急降下していることから、投資家はメタ・プラットフォームズの戦略を快く思っていないようです。そのため、同社の株価は2021年8月に付けた最高値の384ドルから、14ヶ月後には90ドルを割り込むまで急落しました。

他の多くの銘柄と同様に、メタ・プラットフォームズの株価も回復し、現在は2022年10月の安値から2倍の水準にあります。また、過去の水準と比較すると、それに低迷するデジタル広告市場がいずれ回復するとの見通しを考慮すると、株価収益率(PER)21倍というバリュエーションには割安感があります。

さらに、同社はアプリから2022年に1,140億ドルの売上を得ています。仮想現実(VR)部門のリアリティ・ラボの売上は20億ドルであり、5%減といっても心配するほどのことではありません。

意外ではありませんが、マーク・ザッカーバーグCEOは、もうメタバースについてあまり語りたくないようです。これは投資家に安心材料となりましたが、同時に、アプリ主導の売上が間もなく頭打ちになることを意味している可能性もあります。リアリティ・ラボが成長を牽引できなければ、投資家はもはや、21倍のPERを割安と思わなくなるかもしれません。

従って、AIを駆使したメタバースに失敗すれば、メタ・プラットフォームズはハイテク業界のコカ・コーラやマクドナルドとなる可能性があります。つまり、世界的な企業となり、もはや成長を牽引できる新たな市場がないということです。自社の技術を効果的に活用できない限り、そして活用できるようになるまで、同社の株価はグロース投資家を失望させ続けるかもしれません。

ファイバー・インターナショナル:ChatGPTの出現で見通しに暗雲

AI革命によって失われる仕事があることに疑いの余地はありません。結局のところ、新たな技術によって、かつて儲かっていた仕事が陳腐化した例は歴史上に数多くあります。その代表例が電信技師です。

そのため、ChatGPTのような新たな言語ツールが普及すれば、一部の仕事が脅かされると考えるのは自然な流れでしょう。例えば、ライター、校正者、編集者など、専門的な言語スキルが求められる職業は、危機に迫られるかもしれません。同様に、フリーランスと仕事の依頼主を結び付けることで利益を得ている企業も、ピンチを迎える可能性があります。

ファイバー・インターナショナルは、ウェブ上でフリーランスと依頼主を結び付けるプラットフォームを運営しています。同社がサービスを提供するフリーランス職の多くは、今すぐにAIに脅かされることはないでしょうが、同社をめぐっては短期と長期の2つの懸念が考えられます。

短期的な懸念は、風評リスクです。仮に、同社のプラットフォームに登録しているフリーランスの中に、密かにChatGPTを使用して仕事をこなす人が1人でもいたらどうなるでしょう。その場合、人間が作るコンテンツにお金を払っていると思っている購入者は、ファイバー・インターナショナルのプラットフォームから離れていく恐れがあります。

次に、長期的な懸念ですが、ファイバー・インターナショナルのビジネスモデル自体が脅かされる可能性があります。ChatGPTや同種のAIチャットボットの改良が進めば、購入者はいずれ、AIが生成するコンテンツにお金を払うことに抵抗がなくなるかもしれません。しかも、そうしたコンテンツは人間が作るものよりも、安い価格で、短い時間で作られる可能性が高いのです。

いずれにしても、ファイバー・インターナショナルを取り巻くファンダメンタルズは、良く見ても強弱混在です。同社は利益を生み出しておらず、営業利益率はマイナス15.1%に上ります。一方で、四半期売上高の成長率は11%に減速しており、2021年のピーク時に達成した100%の増収率をはるかに下回っています。

AIの台頭は間違いなく勝者と敗者を生み、ファイバー・インターナショナルは敗者側に入る可能性が十分にあります。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットの元CEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。フェイスブックの元市場開発担当ディレクター兼スポークスマンであり、メタ・プラットフォームズのMark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerbergは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Jake Lerchは、アマゾン・ドットコム、コカ・コーラ、マクドナルドの株式を保有しています。元記事の筆者Justin Popeは、ファイバー・インターナショナルの株式を保有しています。元記事の筆者Will Healyは、記載されているどの銘柄のポジションも保有していません。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、ファイバー・インターナショナル、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、以下のオプションを推奨しています。コカ・コーラの2024年1月満期の47.50ドルコールのロング。モトリーフールは情報開示方針を定めています。