今後の金融政策の焦点の変更を示唆

現地時間2月1日に米国のFOMC(米連邦公開市場委員会、日本の金融政策決定会合に該当)が開催され、政策金利は市場予想通り0.25%の利上げにより4.5-4.75%となりました。利上げ幅は2会合連続で縮小されています。なお、公表された声明文では、物価は高止まりながら幾分緩和したとの認識、今後の政策の焦点が利上げの「ペース」から利上げの「程度」にシフトするとの示唆、が前回からの変更点として見られました。

この変更は物価上昇がピークを過ぎたとの認識のもとで、利上げサイクルの終了が視野に入っている点を感じさせるものでした。ただし、次回以降の利上げ継続スタンスは変わらず、市場の反応はFOMC直後には2年金利がやや上昇し円安となりましたが、株式や長期金利は小動きにとどまり、その後の会見によって株高・金利低下・円高と大きく動きました。

パウエルFRB議長「ディスインフレが現在進行中」

FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は会見で、ディスインフレが現在進行中との認識に加え、労働市場の力強いデータが続いていることは喜ばしいと発言しました。これまでの景気を抑制してでも物価を抑えるとの引き締めスタンスが緩まった点はポジティブに捉えられます。

また今後はデータ次第としながらも、少なくとも2回の利上げを協議するとしています。なお利上げ停止後に再開する選択肢は検討していないものの、予測通りの経済動向であれば、2023年中の利下げは想定していないとも話しました。

景気は鈍化基調を継続、市場の利下げ期待には注意が必要

今後の政策金利の市場見通しを見ると、次回会合での0.25%利上げはまだ完全に織り込まれておらず、年前半に1回の利上げによって引き締めは終了し、また年内の利下げ開始が想定されています。今日の会合によって見方はやや利下げ方向に強まりましたが、FRBの見解とはズレが生じています。

今後市場のテーマは利上げから景気そのものにシフトするとみられます。2月1日に発表された代表的な景況感指数である米ISM製造業景気指数(1月)が予想以上に景気鈍化を示唆する一方、労働市場データではFRBが注目する求人件数が予想以上に増加するなどまちまちです。景況感は景気に先行する性質の一方、労働市場は離職者が中々戻らないなど構造問題を抱えているなかで、全体として景気は鈍化基調を継続していると思われます。

FRBは利上げ終了後も当面政策金利を維持する見込みであり、先行する市場の利下げ期待には注意が必要です。今後FRBが利下げを示唆するのであれば市場は好感するでしょうが、そのためにはファンダメンタルズの一段の悪化が必要でしょう。そのことはリスク資産にとってネガティブな点に注意が必要でしょう。景気後退入りも囁かれる中で、短期的には一方向に決め打ちせず、引き続き時間・資産分散を意識したい局面と考えます。