ITバブル崩壊や金融危機、コロナショックも乗り越え29年連続増配

今回から月に1度、米国株について考察していきます。初回はフロリダ州に本社を置く、電力事業の持株会社ネクステラ・エナジー(NEE)です。

同社は子会社を通じて、公益電力事業と再生可能エネルギー事業を展開し、29年間連続増配を達成している、配当貴族指数の構成銘柄です。配当貴族指数の採用条件は、連続増配25年以上の他、時価総額30億米ドル以上であること、1日の平均取引額500万ドル以上であることがあげられます。

【図表1】ネクステラ・エナジー(NEE)年間配当履歴推移(1991年~2022年)
出所:Bloombergより筆者作成

25年以上増配というと、ITバブル崩壊や金融危機、コロナショックの時にも増配を続けてきたということです。非常に安定した事業基盤と不況にも負けない独自の強みがあり、長期投資に適した銘柄と考えられます。さらに言えば、長期増配というのが1つのステータスになっているため、今後も増配を続けていく可能性が高いと思います。

公益電力事業で全米第3位、再生可能エネルギー事業で全米第1位を誇る

実際のところ、ネクステラ・エナジーは伝統的で安定収益を得られる公益電力事業で全米第3位、そして成長著しい再生可能エネルギー事業で全米第1位のポジションを獲得しており、安定性と成長性を兼ね備えた企業として注目できるでしょう。

中心となっている会社は子会社が「Florida Power & Light(略称:FPL)」。フロリダ州最大・全米第3位の公益電力会社です。1925年設立の同社のルーツであり、560万の電力会社を通して1,100万世帯に電力を供給しています。供給する電力エネルギーが天然ガスを中心とするクリーンエネルギーであることが特徴です。

公益電力事業は、常に一定の収益を得られるサブスクリプション型ストックモデルであり、収益安定性が非常に高いビジネスです。公益事業による安定したキャッシュを再生可能エネルギー事業への投資に回すことで、成長ポテンシャルを高め続けており、電力会社としては世界最大級の時価総額を誇ります。

その公益電力事業で得られた収益を、同じく子会社で再生可能エネルギー事業を展開するNextEra Energy Resources(略称:NEER)に投資を行っています。NEERは、100%再生可能エネルギーによる発電を本格化した、米国初の公益電力会社として知られます。

設立は1997年で、翌年には風力発電所を相次いで新設。2002年以降、風力発電事業者の買収によって事業を拡大。2009年からは太陽光発電事業も拡大し、今では再生可能エネルギーのリーディングカンパニーとしてのポジションを確立。太陽光発電と風力発電においては米国最大の発電能力を誇ります。

また、フォーチュン誌の2022年「世界で最も賞賛される企業」リストで電気・ガス公益事業業界の第1位を獲得するなど、注目を浴びている企業です。

業績好調、脱酸素の流れも追い風となり高い成長余地に期待

世界的な脱炭素への移行を背景に、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が加速しており、今後同社の成長余地は高いと思います。

足元の業績も好調です。2022年12月期の業績は売上が前年比22.8%増の209億5600万ドル、純利益が16.1%増の41億4700万ドルと増収増益です。もちろん増配となっており、来期も増収増益、増配の見通しです。

2000年からの株価の長期推移を見ると、配当を除いた場合でもS&P500よりも圧倒的なパフォーマンスとなっており、今後もS&P500を上回るパフォーマンスを期待出来ると思います。

【図表2】2000年1月7日を1としたNEEとS&P500の株価推移比較
出所:Bloombergより筆者作成