毎週月曜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問に広木隆が回答いたします。回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。

Q.日銀の長期金利コントロールの負の影響について

TORA様からのご質問

日銀会合後を経て日本の長期金利は0.38%ほどに下げており下落余地は小さそうに思います。再び0.5%に張り付く可能性と、それを日銀が買い支えた場合の負の影響についてどのようにお考えでしょうか。

回答

日銀は金融政策決定会合で資金貸し出し策の拡充を決めました。貸出期間はそれまで最長2年間だったのを、10年間まで実施できるようにしました。貸し出したお金で、銀行に国債などに投資してもらう狙いです。第1弾として5年物で実施したところ、1兆円の貸出枠に対して3倍の需要が集まり、国債利回りの低下につながりました。国債を無制限に買う指し値オペと組み合わせながら、金利を抑え込む作戦です。いまのところ、うまくいっているようです。

「再び0.5%に張り付く可能性と日銀が買い支えた場合の負の影響」というのは、何も今回に限りませんが、イールドカーブが歪み、正常な国債市場のプライシングに影響がでることです。そうした市場の流動性は著しく低下します。社債の利回りは国債の発行利回りを参考に、スプレッドを決めて算出することが通常ですから、指標金利の実勢との乖離がスプレッドの拡大を促し、発行体の調達コストの増加につながっているという指摘もあります。

ただ、こうした弊害もありますが、日本経済全体からみれば些末なことです。社債で調達できないなら銀行借り入れにすればいい。そもそも社債市場で調達できるような企業であれば、銀行はよろこんで融資してくれます。

そんなことより、今は日銀が金融緩和を継続し、ようやく高まってきた企業の賃上げムードに水を差さないことのほうが、よっぽど重要です。

Q.賃金上昇からインフレスパイラルという流れをたどるでしょうか

黒瀬の山ちゃん様からのご質問

最近の傾向から言えば、賃金上昇からのインフレスパイラルを考えています。でなければ、株価水準もトレンドとして上昇基調とならないと思いますが、見解をお伺いしたいと思います。

回答

日本の話、ということで承ります。アメリカでは賃金上昇からのインフレスパイラルはFRBの利上げ長期化につながり株価の下落要因だからです。日本はその反対です。ご指摘のように賃金も物価も上がる、健全なインフレ環境が整うことこそ、日本経済が真にデフレを脱却したと内外の投資家に受け止められ、株価は上昇基調に乗るでしょう。

Q.金利上昇時の株価への影響について

のぶちゃん様からのご質問

日本の金利が近い将来上がると思われますが、金利が上がれば株価は低迷するのでしょうか?

回答

理論的には金利上昇は証券価格を下押しします。将来のキャッシュフローの割引現在価値を下げるからです。ただ、将来のキャッシュフローが確定している債券の価格と株式の価格は違います。例えば金利上昇の背景に、景気拡大があるなら企業業績の成長期待で株価は上がります。このように株価上昇は金利上昇と併存する場合があります。「金利上昇が日本経済の本格的なデフレ脱却を示すものであれば、株価にもプラスに働くはず」と日経新聞・論説委員の川崎健氏は述べていますが、同感です。

Q.中国株への投資はリスクが高いでしょうか

hiko様からのご質問

中国株を検討しています(上がってきた)。カントリーリスクを考えると避けた方が良いのでしょうか。

回答

中国経済の本格リオープンに期待が高まっているのはその通りです。ただし、不動産価格の低迷による家計資産の減少や若年層の失業急増など構造的な問題もあります。不動産や公共インフラ投資がけん引する成長モデルにも限界が見えているだけに、リオープンで盛り上がった「その後」は不透明です。

一方、ゼロコロナ政策で抑えられていた中国からの需要が戻り、欧米やアジアなどの企業収益の追い風になるとの見方から消費株や半導体株などが高値をつけています。直接、中国に投資するのではなく、欧米やアジアなどの中国関連株への投資をご検討されてはいかがでしょうか。

Q.2023年は、日本株は、飛躍の年となるでしょうか

ルイボス様からのご質問

予想では、先進国のなかで一番成長すると言われていました。

回答

もともと10月の国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しで日本は先進国の中でもっとも成長率が落ちない、堅実な見通しが出されていました。IMFは昨日26日に、日本経済に関する年次調査終了に伴う声明を発表しました。それに併せて2023年の日本の経済成長率見通しを1.8%に引き上げると明らかにしました。中国のゼロコロナ政策終了などを背景に、輸出や訪日観光が伸びると予測し、2022年10月に示した1.6%から上方修正したものです。東京都内で記者会見したギータ・ゴピナート筆頭副専務理事は、「中国が経済を再開した好影響が波及する」と説明しました。

ただ、世界の景気も今年は持ち直しが顕著になるでしょう。その中で日本株が飛躍の年になるかどうかは、まずは賃上げがしっかりなされ、デフレ脱却を確固たるものにすることが必要です。

Q.日本にGAFAM的企業の誕生を期待できる?

強欲は善だ様からのご質問

日本企業が強い素材・精密部品以外のGAFAM的なプラットホームグローバル企業は生まれないのでしょうか。

回答

確かにGAFAMのようなグローバルなプラットフォーマとなると難しいだろうと思います。アメリカでGAFAMのような企業が生まれた背景は、いくつもの要因がありますが、第一に企業文化あるいは起業文化の違い、第二に多様性(たとえばGAFAM創業者はみな、移民か移民の祖先をもつ者です)。そうしたことが影響してフロンティア・スピリッツが違うのでしょう。経済的にベンチャーが育つエコシステムもまったく比べ物になりません。

しかし、グローバルなプラットフォーマではなくとも、ご質問者さまがご指摘されているように、日本企業は素材、精密部品、電子部品などの分野では圧倒的なシェアを占める強い企業がたくさんあります。それでもじゅうぶん、素晴らしいことだと思います。ちなみに、時価総額の増加率で言えば、キーエンス(6861)や東京エレクトロン(8035)などはGAFAMに引けをとらない伸び方です。

 


このコーナーでは、毎週月曜夜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問にチーフ・ストラテジストの広木隆が回答いたします。

今回は2023年1月23日のセミナーで寄せられたご質問から抜粋して回答しています。

回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。

 

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