米雇用統計の予想外の結果を受けて、今月にも行われると見られていた利上げはひとまずは遠のいたと言えます。現状は安倍首相が言うようなリーマン・ショックとは背景が異なることは多くの人が思うところではありますが、BRICsの不安定さのみならず、頼みの米国でも利上げが遠のく状況ということは、少なくとも世界経済の先行きが安心できるとは言えないことを示唆しているように思います。

先日、とある集まりで高齢化が加速する中でのビジネスが話題になりました。ビジネスというと、売り込まれる対象となる高齢者の方々は身構えてしまうかもしれませんが、今後需要がますます伸びる分野についてという意味です。
その時話題に出たのは「信託」についてでした。
信託とは、「委託者が信託行為(例えば、信託契約、遺言)によってその信頼できる人(受託者)に対して、金銭や土地などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度」(一般財団法人信託協会HPより)のことです。

子や孫等の身近な親族がいなかったり、自身で会社経営をしていて事業を滞りなく継承させる必要があったり、将来に関して不安な要素をお持ちの方は少なくないと思います。実際、早めに準備しなかったがために会社を清算することになったケースもあると聞きます。
以前、相続税対策については何度か書きました。相続税が改正されたことで、より多くの方が相続税を支払うことになるためのごく一般的な対策についてです。

第357回相続税も変わる!

第370回相続対策、今から!

様々な事情により、複雑な相続になるケースも多くなってきており、そういう場合に「信託」は一歩進んだ対策と言えるでしょう。
と言っても、信託なんて敷居が高い、自分とは関係ないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、実は身近なところで、私たちはよく似た仕組みを利用しています。
信託と聞いて「投資信託」を思い浮かべた方もいるのではないでしょうか。
投資信託では上記「委託者」=投資信託委託会社=運用会社、受託者=信託銀行、そして受益者=投資家の皆さんにあたります。なお、多くの場合、もう一つ販売会社=証券会社や銀行が介在します。
委託者たる運用会社が設定した目的に沿って受益者たる投資家のために運用し、その資金は受託者たる信託会社が責任もって管理しているわけです。投資信託は投資家の資産を守り、増やすという目的のために様々なプロが介在して運用される金融商品だということ、それを低コストで簡単に活用できるという利便性を再確認したいですね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員