モトリーフール米国本社 – 2022年12月11日 投稿記事より

主なポイント

・ロクの株価は2020年に急騰、2021年に急落に転じ、2022年も下落が続いている
・株価売上高倍率は、ピーク時の33.5倍から2.3倍に低下
・一方で市場シェアを獲得し続けており、長期的なターゲット市場は巨大

ロクの株価は2021年に付けた最高値から90%下落、今後業績は回復するのか?

メディアストリーミング技術を手掛けるロクは、一般的に超グロース株と見られています。一方で、バリュー投資家にとっては、悪夢となっています。

ロクの株価は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの期間中に723%という驚異の上昇率を遂げました。ところが、その後に今度は急降下し、現在は2021年に付けた過去最高値から90%下落しています。

常に黒字というわけではなく、利益を生んだ場合の株価収益率(PER)は高水準です。株価売上高倍率(PSR)も2桁の期間が長く、これはネットフリックス(NFLX)のような長期的グロース株でも稀にしか達成できない偉業であり、アップル(AAPL)は一度も実現したことがありません。

ロクに本当に投資妙味があるとしたら、ロクの株価はなぜ最高値から90%下落したのでしょうか?ロクは長期保有の対象となる銘柄なのでしょうか。

現在の株価が割安だと考える理由

ロクの株価がここ数ヶ月間で下落した理由を見てみましょう。

期待外れの業績は、確かに理由の1つです。同社は過去5四半期のうち3回で、ウォール街のコンセンサス予想売上高を下回り、予想利益でも1回下回り、1回は予想通りの結果でした。売上高で2桁、利益では3桁の割合でアナリスト予想を上回ることも珍しくなかった企業にとって、難しい局面と言えます。

ロクがこうした厳しい状況に追い込まれたのは、マクロ経済の圧力が原因です。2022年第3四半期の決算説明会の際、アンソニー・ウッドCEOは、主な問題点を3つに集約しました。

ウッドCEOは、「広告主は支出を控え、消費者はインフレに圧迫され、経済全体の不確実性は依然として高い。こうした状況は今後も続き、第4四半期には一段と悪化する可能性が高いとみている」と述べました。

同社は、厳しい業界環境に対処するための対策に動いています。長年積極的に行っていた新規採用を停止し、さらに直近数ヶ月で200人を削減して営業費用の伸びを抑えようとしています。しかし、人員削減は弱気の表れと捉えられ、発表後も株価上昇にはつながりませんでした。

既視感あるビジネスプランの変遷、そこから読み解く今後の可能性とは?

ロクはビジネスプランを大々的に公表し、そしてそれが誤解されやすい企業だと考えられます。ネットフリックスも、同じようなことを何度も経験しています。例えば、ネットフリックスがオンラインのDVDレンタル会社からデジタル動画配信企業にシフトした時、消費者寄りではない、金儲け主義だと見られました。しかし、その天才的な戦略転換(確かに不器用ではありましたが)を実行して以降、ネットフリックスの株価は3,000%以上、上昇しています。

アップルにも似たような経験があります。2016年にiPhoneの売り上げが落ち込んだ時、株価は2週間で13%下落しました。あの時は、もしかしたらアップルのキャッシュマシーンの歯車が外れていたのかもしれません。振り返ってみると、大幅な値下げで株価は一時的に下落しましたが、そこで一瞬足踏みした後に500%以上、上昇しています。

ロクも今、同じような岐路に立たされています。

動画ストリーミング業界は、まだ発展途上にあります。テレビ放送は依然として世界中の電波と視聴者を支配しており、ストリーミングサービスが取って代わるには相当な努力が必要です。ロクはユーザーフレンドリーなストリーミングプラットフォームを、サービスにとらわれずに提供するプロバイダーとして、この長期的変革の中で明らかな勝ち組の1社となるでしょう。

現在の厳しいマクロ経済環境においては、ロクはすでに勝ち組と言えるかもしれません。ユーザー数は増え続け、売上高は減速しているとはいえ急速に成長しています。デジタル広告予算の縮小という危機の最中にあっても、ロクのプラットフォームが市場シェアを獲得していることは明らかです。

広告事業を含むプラットフォーム売上高は、第3四半期に前年同期比15%増となりました。しかし同時に、スキャッター広告(継続的なマーケティング広告ではないスポット広告)の売上高は同38%減でした。

ロクは業界のリーダーであり、長期的成長を目指して着実に業績を上げている企業です。しかし、株価はまるでロクの事業が固い壁にぶち当たっているかのような水準にあり、PSRは2.3倍まで低下しています。そのため、ロクの株価は今後も大きく変動するかもしれませんし、景気が落ち込んでいるときには業績が減速することもあるでしょう。

つまり、ロクは長期保有を検討する価値のある企業であると考えます。2011年にネットフリックスがQwikster(クイックスター)という別会社を立ち上げて事業を分離しようとして株価が下落した時のように、今から10年後、大幅に下落した2022年のロクの株価チャートを振り返って、一時的な買い場だったと思うかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Anders Bylundはネットフリックス、ロクの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアップル、ネットフリックス、ロクの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。アップルの2023年3月満期の120ドルコールのロング、アップルの2023年3月満期の130ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。