FRBのインフレ退治姿勢は引き続き株価の重石に
11月に入って1週目のマーケットですが、S&P500は3.35%下落、ナスダック100は5.97%の下落となりました。
11月2日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では市場予想通り75ベーシスポイント(bp)の利上げが決まりました。予想通りだったことが好感されたのか、利上げ発表後のマーケットは一時的に上昇。しかし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見が始まるとマーケットは下落に転じ、最終的にこの日は2.5%下落して終わりました。
そのような弱気が支配する中で期待が持てることと言えば、次回12月のFOMCでの利上げ幅がこれまで4回続いた75bpではなく、50bpへと縮小されそうだということでしょうか。いずれにしてもパウエルFRB議長の徹底したインフレ退治を行うスタンスは変わらず、株価の重石になる状況は続きそうです。
雇用者数が増加する一方で人員削減を進める企業も
先週4日連続で下落した後の11月4日(金)には、米労働省が10月の雇用統計を発表しました。非農業部門雇用数は前月比で26.1万人増と市場予想の20.5万人増を上回ったものの、失業率は9月の3.5%から3.7%へと上昇したことを受け、株価は買い戻されました。
統計上の雇用者数が増える一方で、コインベース(COIN)、ロビンフッド・マーケッツ(HOOD)、メタ・プラットフォームズ(META)、リフト(LYFT)、ツイッター(非上場)などの企業は人員削減を発表していますし、アマゾン・ドットコム(AMZN)は数ヶ月採用を凍結すると発表しました。マクロ環境にフレキシブルに対応する米国企業の中には、これからも人員削減を発表する企業が増えるのではないかと思います。
第3四半期の決算発表は終盤戦に入ってきました。これまでのところS&P500採用銘柄のうち430社が決算発表を終えており、前年同期比3.2%の増益予想となっています。1週間前の3.81%からの下方修正となりました。
第4四半期の決算の見通しについては1週間前における前年同期比の1.92%から今週は0.33%へと下方修正となっています。先週の株価の下落はこのような業績の下方修正を少なくとも部分的に織り込んでいると考えられます。
上院・下院の「ねじれ」、株価への影響は?
11月8日(火)、米国では中間選挙が行われます。ワシントンポストによると、下院は共和党が過半数で大きく議席を確保する勢いがあり、上院についても民主党は苦戦しているとのことです。過去のデータを見ると、米国株は中間選挙後に上昇する傾向にあります。加えて、大統領と議会の政党が異なる、いわゆるねじれた状況の方が株価のパフォーマンスが良いとも言われています。
10月3日付コラムで年末の米国株の季節性について説明しました。2022年は大統領就任2年目であり中間選挙の年です。1929年からこれまで大統領就任2年目の年の11月から翌年の4月までは大統領の4年サイクルで最も米国株は上昇してきた半年間ということです。ただ、2022年については米国では利上げも行われているし、この季節性に沿ってマーケットは上がらないだろうと思っている方も少なくないのではないかと思っています。そのような中、非常に興味深いデータを見つけました。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)が出している1954年からこれまでの間のデータによると、11月から1月までの3ヶ月間について、利上げの局面の方が利下げの局面よりS&P500は上がりやすく、リターンが高いという結果が出ています。利下げの局面におけるS&P500の3ヶ月間のリターンは3.82%で、この間のリターンがプラスになる確率は69%なのに対し、利上げの局面における同期間のリターンは4.3%であり、この間がプラスになる確率は72%となっているのです。
2022年の経済の状況は極めて特殊な状況です。そのような状況下、米国株がこれまでのパターンと同じように再現されるかどうかは誰にもわかりませんが、私は米国株のアノマリーというのは決して無視できない存在なのではないかと考えています。
今週の米国株式市場の注目ポイント:米CPI
今週の市場の注目は11月10日(木)に発表が予定されている10月の米消費者物価指数(CPI)です。予想は前年同月比で9月の8.2%上昇に対し7.9%上昇、エネルギーと食料品を除いたコア指数は9月の6.6%上昇に対し今回は6.5%上昇となっています。