直近のJ-REIT価格動向

J-REIT価格は、7月下旬以降続いていた安定的な値動きから一転し9月下旬に急落した。東証REIT指数は、9月26日に2ヶ月ぶりに2,000ポイントを割り込むと9月28日には1,916ポイントまで下落した。その後は反発したが10月に入っても2,000ポイント台を回復できずに推移している。

価格急落の要因は、6月と同様に米国10年債利回りの大幅な上昇と考えられる。9月28日には2008年以来となる4%を超える水準まで上昇し、米連邦制度準備理事会(FRB)のインフレ抑制重視政策が長期金利にも影響を与える状況となった。

米国でのインフレは、収束する見込みが立っていない。従って、長期金利上昇の抑えとなっていたFRBの政策転換は、投資家が想定していたよりも時期が先送りされる可能性が高まったことが影響したと考えられる。

また、日本の投資家にとって中期間にあたる9月という時期に米国10年債利回りが上昇したこともJ-REIT価格下落に影響したと考えられる。8月は金融機関が2022年では最大となる256億円の買越しを行っていたため、中間決算を前にその反動による売越しを行った可能性がある。

さらに下落すれば物流系銘柄の投資妙味が生じる

米国長期金利の上昇は、物流系銘柄の価格に影響を与えた。物流系銘柄は投資家の需要が高く、低い利回りで推移していたため、米国長期金利水準と比較して割高感が生じるようになったためだ。

具体的に、9月の価格下落率が大きい3銘柄は産業ファンド投資法人(3249)▲10.7%、日本プロロジスリート投資法人(3283)▲9.7%、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(3471)▲9.2%と物流系銘柄が占めた。従って、米国10年債利回りの上昇が続くようであれば、短期的には物流系銘柄の価格は軟調な展開が続きそうだ。

一方で、FRBの政策がインフレ抑制から景気重視に転じると考える投資家にとっては、物流系銘柄がさらに下落すれば投資妙味が増すことになると考えられる。その理由としてFRBの政策転換時には、景気が悪化している可能性が高いことが挙げられる。

6月以降に株式市場が乱高下した中でも、J-REIT価格が比較的堅調に推移していた要因は安定的な分配金水準が期待できることであったと考えられる。従って米国の長期金利上昇が落ち着けば、J-REIT価格が回復する可能性がある。

さらに物流系銘柄の分配金水準は、他用途の銘柄とは異なり物件売却益の依存が少ないという特色がある。日本の不動産売買市場高騰は、日本銀行の異次元緩和策により支えられている。従って、日本銀行の政策変更によって不動産売買市場に悪影響があったとしても、賃貸収益の安定性が高く分配金への悪影響が少ない物流系銘柄に対する投資家の需要が期待できると考えられる。

このような観点から、物流系銘柄に投資するポイントとして、9月に倍増したFRBの保有資産縮小ペースがさらに加速しないという条件が挙げられる。前述の通り物流系銘柄は収益安定性から投資家の需要が回復する可能性はあるが、消去法的な選択肢でもある。従って投資市場からの資金回収となるFRBの保有資産縮小ペースが加速すれば、物流系銘柄の価格回復が難しくなる可能性が高い。