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外部環境が変化しても投資方針にブレはなし
――最近ではコロナ・ショックに始まり、ロシアによるウクライナ侵攻、米国の金融政策の転換などマーケットにインパクトを与える出来事が相次いでいますが、どう対応されてきましたか?
コロナ・ショックも市場の下落率が自分のリスク許容度の範囲内だったので、特に気にすることなく積立を継続しました。20年にわたり積立投資を続けてきましたが、その間、外部環境の変化によって投資方針を変更したことは一度もありません。加齢や仕事のリタイアなど内部環境の変化に伴うリスク許容度の変更があれば、ポートフォリオや投資方針を見直すかもしれませんが。
ロシアによるウクライナ侵攻は早期収束を祈るばかりです。ただ、ひとりの個人投資家として投資方針を変更するような出来事とは考えていません。歴史を振り返ると、20世紀の2度の世界大戦を経てなお、株式市場は騰落を繰り返しながらも長期的には上昇カーブを描いてきました。今後の市場動向は神のみぞ知るですが、見届けていきたいと思っています。
――円安やインフレも急速に進んでいます。こうした局面を乗り切る上で必要なことは何だと思われますか?
「自分のリスク許容度の範囲内にリスクを抑えた資産配分とポートフォリオ」、これに尽きます。為替は適性レンジレートがあるわけではないので難しい。とはいえ、為替リスクは海外のビジネス(株式や債券)への投資にはつきものですから、予測できないことを前提に、単一国の通貨のみに偏らせないなど、円安、円高のどちらに動いてもある程度対応できるようにしておくことが大切だと考えます。
投資の秘訣、自分でコントロールできる部分に注力する
――今後の資産の目標や投資方針などを教えてください。
何千万円貯めようといった目標額は特にありません。私の中では、投資とは「自分の稼ぎの中から生み出した余剰資金を置いておく有利な場所」です。必要に応じて取り崩すこともあります。余剰資金の有利な置き場所として活用しているだけですから、目標額も設定していませんし、正直、リターンの計算もあまりしていません。
投資に際しては、自分でコントロールできる部分に注力するのが有効と考えています。インデックス投資家の場合、市場平均リターンはコントロールできないのでいかんともし難いので、コストやリスクをコントロールする、言い換えるなら、なるべく手数料の安いファンドを選んだり、自分のリスク許容度状況に応じて債券比率を決める上下したりしていくことが大切だと思います。
精神的な余裕を生み出す生活防衛資金という存在
――投資とは別に「生活防衛資金」もキープしていらっしゃるとのことですが、どのような思いからですか?
私は、木村剛さんの『投資戦略の発想法』という本に書いてあったのを読んで、10年以上前から、投資資金とは別に「生活費の2年分の生活防衛資金」をキープしています。というのも当時はリストラも行われていましたし、被災した場合や急な入院などに備えていました。リーマン・ショックを乗り切れたのも、この生活防衛資金の存在が大きかったですね。仕事をしなくても2年間は暮らしていける現金があることで、「暴落した株価が回復してくるのをじっくり待とう」という気持ちになれました。
また、リレー投資(手数料の安いインデックスファンドなどで積み立て投資を行い、一定額が貯まったらETFなどに乗り換える投資手法)を行う際も、解約期間の価格変動リスクを抑えるために一時的に生活防衛資金をETF購入資金に活用することや急な支出に使用することもありました。
今は金融商品の利便性が向上し、投資信託の繰り上げ償還などのリスクも減っています。投資信託の信託報酬率等が安くなってリレー投資の必要性もなくなりましたから、生活防衛資金は生活費の半年分とか1年分でもいいのかもしれません。
FIRE達成が射程圏内、投資をすることで得られた3つの自由
――投資が水瀬さんの人生にもたらした最も大きな変化は何でしょうか?
私の人生の選択肢を大きく広げてくれたことでしょうか。投資の書籍を出版したり、イベントを企画したり登壇したりといったこともその1つです。
そして、経済的な余裕が生まれたことで、住む場所や働き方を自由に選ぶこともできます。私自身、FIREブームのずっと前から、早期リタイアを視野に入れてきました。といっても、今の若い世代の方々が考える「20代で頑張って節約してお金を貯め、30代でリタイアして極力消費しない生活をする」というFIREとは少し違います。私のFIREは、生活費の心配をせずに自分のやりたいことをやりたい場所でやるというもの。FIRE達成に向け、今は8合目、9合目辺りまで来ている感じですね。
マーケットに振り回されず、淡々と投資を継続する
――これから投資を始める方におすすめの「投資のバイブル」があれば教えてください。
私のブログの名前の由来にもなった『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著)、『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著)、『株式投資』(ジェレミー・シーゲル著)を挙げたいと思います。いずれも、個人投資家が投資をする上で重要な知識を押さえた古典的名著です。
しかし、初心者がいきなり読むには少々ハードルが高いかもしれません。初心者の方には、まずは投資へのきっかけとして、手前味噌で恐縮ですが、漫画も使ってわかりやすく解説している拙著私の著書『お金は寝かせて増やしなさい』や、新書サイズでコンパクトにまとまった山崎元さんとの共著『【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術』等をお勧めします。
――これから投資を始める20~30代の方にメッセージをお願いします。
仕事が忙しくても手間をかけずに市場平均のリターンを得ていく投資方法(インデックス投資)があるということを、まずは知ってほしいですね。
なぜなら、私は20~30代にとって大事なのは本業の仕事だと考えています。仕事に打ち込んで成果を出し、しっかりキャリアアップしていく時期だからです。マーケットに振り回されるような投資スタイルを取る必要はないと思います。
そして、いったんインデックス投資を始めたら、周囲の“情報ノイズ”に惑わされず、淡々と投資を続けていくことが大切です。改めてになりますが、インデックス投資こそ「継続は力なり」です。
――ありがとうございました。
※本インタビューは2022年9月12日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします