大きなサプライズとなった5月の米CPI
少し先のことにはなりますが、当面の市場の最大の注目は7月13日に発表される6月分の米消費者物価指数(CPI)の伸びに向かうことになりそうです。
周知のとおり、前回5月分の米CPIの結果がもたらしたサプライズは相当に大きなものでした。その結果、米連邦準備制度理事会(FRB)は6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、追加利上げの幅を0.75ポイントに引き上げる必要に迫られたのです。
それまでパウエルFRB議長は「0.5ポイントが適切」とわざわざアナウンスしていたわけで、それだけ5月の米CPIの結果はFRBにとっても強烈なものであったということになるのでしょう。
米CBも米PCEも低水準で推移
ただし、実のところ5月の米CPIの結果において「変動の大きなエネルギーと食料品を除くコア指数」は6.0%の上昇と、その伸び率が4月の6.2%上昇という結果から鈍化していました。
つまり、ウクライナ情勢に左右されやすいエネルギーと食料品の価格上昇という特殊要因を除けば、すでに米国の物価動向はピークアウトしている可能性もあるということで、その背景には米消費のセンチメント低下が関わっていると推察されます。
実際、先週6月28日に発表された6月の米コンファレンス・ボード(CB)が発表した消費者信頼感指数は2021年2月以来の低水準でしたし、6月30日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)コアデフレータも市場の事前予想を下回っていました。そもそも、原油や小麦などの価格上昇というのは米国の利上げによって抑えられるものではありません。それでもFRBが大幅利上げを続けようとするなら、いずれ米国景気は後退局面に突入しかねないと市場は警戒し始めています。
FRBの金融引き締めは今後どうなるか
そして、次に誰もが想定するのは「FRBの引き締め姿勢はこれまでの市場の期待よりもかなり和らいでくるのではないか」ということでしょう。その実、米10年債利回りは先週末にかけて急低下し、7月1日には一時2.79%まで大きく低下する場面を垣間見ました。
確かに、先週6月29日には一時的にも米ドル/円が137円処まで買い上げられる場面もありました。それは複数のFOMCメンバーらの発言によって「7月のFOMCでも0.75ポイントの利上げ実施が決定される」との見方が強まったことが原因でしたが、これから7月下旬までの間に、そうした見方が変化する可能性も大いにあると思われます。
だからこそ、前述した6月分の米CPIの結果が重要ということになりますし、仮に6月分においてもコアCPIの伸びが鈍化し、それでもFRBがタカ派姿勢を緩めなければ、いよいよ市場は本格的に景気後退懸念を強めることとなるでしょう。
もちろん、今週末発表される6月の米雇用統計の結果も市場に大きな意味を持つことになるでしょう。元々「伸びしろ」が小さくなってきている上、近頃は米テック業界などの一部で雇用抑制の動きが目立ち始めたりもしています。
米ドル/円、ユーロ/米ドルの動きで懸念されるリスク
仮に米雇用統計の結果を受けて、市場が7月の米利上げ幅に対する見立てを0.5ポイントに“下方修正”するようなことにでもなれば、一旦は米ドル/円の下値リスクが高まることも想定されます。
もちろん、まだ米ドル/円が136円台前半あたりまで戻りを試す可能性もあると思われますが、仮に135円処の節目をクリアに下抜けると、まずは6月23日安値=134.26円処が意識されやすくなると見ています。
一方、ユーロ/米ドルは先週6月30日に月末・四半期末のロンドン・フィキシングに絡んだ買い戻しによって1.0490ドル処まで一旦大きく買い戻されたものの、翌7月1日には一時的にも1.0400ドル割れの水準まで急低下する場面がありました。
同日発表された6月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は予想以上の高い伸びとなりましたが、基本的には域内景気の先行き不安が根強く、なおも5月安値の1.0349ドル処を下抜けるリスクに対しては一定の警戒が必要であると思われます。