7月5日(木)の19時に中国人民銀行はウェブサイト上で利下げを発表しました。内容は7月6日より貸出金利については6ヶ月~1年物を0.31%、その他の期間については0.25%引き下げ、預金金利については普通預金が0.05%、3ヶ月、6ヶ月、1年物の定期預金は0.25%、2年物と5年物定期預金は0.35%、3年物定期預金は0.40%をそれぞれ引き下げます。

また、これと同時に融資金利の下限をこれまでの基準金利の0.8倍から0.7倍に引き下げました(預金金利の上限は基準金利の1.1倍に据え置き)。ただ、不動産投機を抑えるため、中国人民銀行は投機的住宅購買を抑制すると改めて強調し、個人向けの住宅融資金利の上限・下限変動幅は据え置くとしています。

利下げ後の中国本土株式市場の動きを見てみると、大きく動いたのが不動産セクターと銀行セクターです。前述のように個人向けの住宅融資金利の上限・下限変動幅は据え置かれましたが、貸付金利の引下げは不動産企業の金利負担を軽くします。そして、住宅ローン金利が引き下げられましたので、実需による住宅購入は促進されます。このため不動産セクターは利下げ発表後に上昇しています。一方で、今回の利下げでは、貸付金利の利下げ幅が預金金利の利下げ幅を上回っています。このため銀行の利ざやが縮小することになり銀行セクターは下落しています。 今回の金利引き下げは中国経済が予想よりも大きくスローダウンしていることを示唆するものである一方、中国の金融政策が微調整ではなく、はっきりと金融緩和に傾いたことも意味します。中国では2012年10月に5年に1度行われる中国共産党大会が開催される予定です。特に今年は胡錦濤氏から習近平氏にトップの座が変わると予想されている重要な大会になります。このため、共産党大会開催前後に経済成長を安定化させるために、中国政府は今後さらなる成長支援政策を打ち出してくる可能性が高いと思います。

また、これまでにも何回か、景気支援の為に中国政府がインフラ投資を加速する動きを見せていることを書いてきましたが、国営の中国証券報によると中国政府はインフラ投資の承認プロセスを加速するため、5月の段階で複数の政府系機関に対し、6月末までに2012年のインフラ投資計画の提出を求めています。従って今後数ヶ月でそれらのインフラ投資案件による経済活性効果が出てくる可能性が高く、引き続きインフラ投資関連銘柄で大きく下落しているものは妙味があると思います。