モトリーフール米国本社、 2022年5月10日投稿記事より
主なポイント
・アップスタートは3桁の成長率が持続
・経営陣はマクロ経済環境を認識し、保守的なガイダンスを発表
・アップスタートを買いとする理由は依然多い
堅調な四半期決算にもかかわらず、ガイダンスが失望を招いて一気に売られる
誰が見ても好調な四半期決算を発表したアップスタート・ホールディングスですが、株価は5月10日に暴落し、60%も下落しました。
ウォール街は、人工知能(AI)を活用した融資プラットフォームをクラウドベースで提供する同社に大きな期待を寄せており、実際に決算内容は投資家の予想を上回ったものの、今後の見通しを示したガイダンスに強さが足りなかったようです。5月10日の急落により、株価は2021年10月に付けた最高値から92%以上下落しています(執筆時点)。見事なまでに転落したアップスタート株は買いなのでしょうか。
すべては好調を示唆
答えは投資家によって異なるかもしれませんが、あらゆる情報が売られ過ぎであることを示唆しています。
アップスタートが発表した第1四半期決算は、売上高が前年同期比156%増の3億1,000万ドル、手数料収入は同170%増の3億1,400万ドル、調整後1株当たり利益(EPS、非GAAP)は0.61ドルでした。アナリストのコンセンサス予想は売上高3億2,450万ドル、調整後EPS0.51ドルだったため、アップスタートはこれらの予想を余裕でクリアしたと言えます。
先行きに不安?
第1四半期決算はアップスタートの事業機会の大きさを再確認させるものでしたが、会社側が示したガイダンスは投資家に不安を与え、激しい売りを招きました。
経営陣は第2四半期の売上高を2億9,500万~3億500万ドルと予想しており、中間値で前年同期比約55%増となる見通しです。どう考えても立派な数字ですが、第1四半期に達成した3桁の成長率と比べると急激な減速となります。さらに悪いことに、経営陣は第2四半期が大幅な減益となる可能性を示唆し、調整後純利益は約2,900万ドルと、第1四半期の約半分となる見通しを示しました。
その上、経営陣は通期ガイダンスを下方修正し、2022年の予想売上高は前年比47%増の約12億5,000万ドルと、従来予想の同65%増から引き下げられました。
投資家はこれを、アップスタートの3桁成長の時代が終わったことを示す決定的証拠と捉え、売りに走ったようです。しかし、手放すのは時期尚早かもしれません。
短期的逆風
決算発表のコンファレンスコールで経営陣は、アップスタートが目標に向かって前進していることを強調しました。同社によれば、現在、57の銀行および信用組合に加え、500社を超える自動車ディーラーが、顧客の信用力を判断するために同社のプラットフォームを利用しています。ちなみに、2020年12月に同社が新規株式公開(IPO)を行った時、同社のプラットフォームを利用していた金融機関はわずか10社でした。さらに、同社は第1四半期だけで1万1,000件を超える自動車ローンの借り換えを取り扱いました。これは2021年の年間取扱件数の2倍近い数字です。
業績が絶好調であるにもかかわらず、なぜ経営陣は見通しを下方修正したのでしょうか。一言で言えば、「経済」が理由です。デーブ・ジルアードCEOはガイダンスを引き下げた理由として、金利の上昇とマクロ経済全体に対する継続的リスクを挙げ、次のように述べました。
「2022年が経済と、特に金融サービス業界にとって厳しい年になることは明らかです。(中略)数十年ぶりの高水準で推移しているインフレに対抗するために、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き上げに関して積極的になることは間違いないでしょう。(中略)貸付というのは現在も、そしてこれからも景気に左右されやすい業界なのです。」
マクロ経済が不透明であることは周知の事実であり、このようなコメントも驚くことではありません。
機会は依然として大きい
投資家は、アップスタートが融資に関する従来の枠組みを大きく転換させている点に着目する必要があります。個人向けローン、自動車ローン、住宅ローンを合計すると最大市場規模は約5兆4,000億ドルに上り、その他に6,440億ドル規模の中小企業向け融資市場があります。
アップスタートの経営陣は、経済の不確実性から生じる逆風が一時的であると正しく認識しており、長期的視点を持つ投資家にとって、アップスタートに関する投資テーマは何一つ変わっていません。マクロ環境は別として、アップスタートにとって機会は巨大であり、既存のシステムを壊すにはいつだって時間がかかるものです。
最後に、アップスタート株のバリュエーションは相当に割安な水準となっています。株価売上高倍率(PSR)は1~2倍で「良好」とされる中、アップスタートの予想PSRは2倍未満であり、これは同社の歴史上で最も割安なバリュエーションです。
同社の破壊的技術の急速な普及、依然として大きな機会、バリュエーションの大逆転余地を考えると、アップスタートは買いだと考えます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Danny Venaは、アップスタート・ホールディングスの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアップスタート・ホールディングスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。