ユーロ/米ドルと金利差、異なる2つの関係
最近にかけての米ドル高は、円に対してだけでなく、円以外の通貨に対しても進んでいる。例えばユーロ/米ドルも、一時1.05米ドル割れまでユーロ安・米ドル高となった。
このユーロ安・米ドル高をある程度説明できそうなのは、独米2年債利回り差ユーロ劣位の拡大だった(図表1参照)。2年債利回りは、基本的に金融政策を反映する金利なので、その意味ではこれまでのユーロ安・米ドル高は、FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)の金融政策の違いの影響が大きかった可能性が高そうだ。
敢えてそういったことについて確認したのは、同じ金利差でも独米10年債利回り差は2021年から一進一退が続き、ユーロ安・米ドル高が大きく広がった動きを説明できるものではなかったからだ(図表2参照)。
念のために言えば、独米10年債利回り差から見ると、最近にかけてのユーロ/米ドルは「下がり過ぎ」の可能性すらありそうだ。以上のように見ると、ユーロ安・米ドル高がこの先一段と広がるかは、米国とユーロ圏の金融政策の違いを受けた短中期の金利差の動きが鍵になりそうだ。
ところで、最近にかけての下落を受けて、ユーロ/米ドルは52週MA(移動平均線)を10%近く下回ってきた(図表3参照)。ただ、ユーロ/米ドルはこれまでに52週MAを10~15%以上も下回ったこともあった。
その意味では、既に見てきた欧米の金融政策の違いなどを受けた金利差の動き次第では、ユーロ/米ドルがさらに続落、52週MAを1割以上と大きく下回ることで、1ユーロ=1米ドルといったユーロと米ドルの等価(パリティ)割れに向かう可能性は残っているのではないだろうか。
最後に、ユーロ/米ドルの5年MAかい離率を見ると、こちらはまだ5年MAを1割も下回らない程度にとどまっており、未だ「下がり過ぎ」懸念が強いということでもなさそうだ(図表4参照)。
以上からすると、米国とユーロ圏の金融政策の違いを反映した独米金利差の動きなどによっては、一段とユーロ安・米ドル高となり、1ユーロ=1米ドルといったパリティ割れの可能性も十分あるということではないか。