>> >>2年4ヶ月ぶりの米国、気づいた変化とは【前編】

米国でウーバーに乗ると世界が垣間見える

今回の米国出張では移動の際、ライドシェアサービスのウーバー(UBER)を活用しました。日本では乗車サービスよりも、食べ物の宅配サービスであるウーバーイーツの方が有名になっていますが、ウーバーが生まれた米国では乗車サービスが全国的に普及しています。

ウーバーでは、タクシー会社に勤めていなくても同社に登録すれば誰でもドライバーとして収入を得ることができます。どこにいても、スマホアプリが使える環境であれば、手軽に配車を依頼できて便利です。米国では自身のことを遠慮なく話してくれる運転手が多いので、彼らの話を聞くと様々な人生模様を知ることができます。

例えば、サンフランシスコ市内で最初に出会った運転手は、10年前にアフリカのソマリアから米国に移住してきた方でした。「ソマリアは危ないイメージがあるけど、実際のところどうなの?」と聞いてみたところ、彼は「私にとってソマリアは米国と同じくらい安全な国であり、一部の危険な地域さえ行かなければ良いところだ」と強調していました。外国人の私にとって、これを額面通り受け取ることは難しいものの、現地の方にしてみればそうなのかな…と思った次第です。

4年前の米国にやってきたというロシア出身の若い運転手は、中国の地方都市で英語の先生をしていた経験があり、その学校で重宝されていた話を自慢していました。運転手の中には非常にアクセントが強い方もいますが、総じて英語が堪能で、遠慮なく話をしてくれます。日本のタクシー運転手の中にも話好きの方がいらっしゃいますが、米国の運転手には自身の考えていることや収入までも遠慮なく話してくれる方がいます。

30年前に米国に移民してきたという話好きのパレスチナ出身の運転手ハサーンさんは、「アルファベット(グーグル)やメタ・プラットフォームズ(フェイスブック)の社員食堂の食事は美味しく、しかも無料なのだが、テスラのイーロン・マスクがケチで、テスラの社員食堂は有料なんだ」と話してくれました。「なぜそんなことを知っているの?」と聞くと、彼はウーバーの運転手になる前、リムジンの運転手をしており、お客さんから聞いたというのです。私もメタの社員食堂で食事をする機会を得たことがあるので、そこでの食事が無料であることは知っているのですが、テスラの社員食堂が本当に有料なのかどうかは確認していません。

子どもの頃、メキシコから米国に移住してきた運転手ジョアンさんはロサンゼルスからサンフランシスコに引っ越したばかりです。友だちを訪ねて2週間だけ滞在する予定だったのが、サンフランシスコが気に入って引っ越すことにしたと言います。その理由を聞くと、ロサンゼルスだと1日の売上が250ドルなのだが、サンフランシスコでは1日に300ドル稼げるからだそうです。サンフランシスコの方が街がコンパクトなので、仕事の件数が多く、効率が良いとのことです。彼女は自分で車を持っておらず1週間340ドルで借りており、1日のガソリン代は大体100ドルと言います。1ヶ月22日働くとすると1日の売上が300ドルですから1ヶ月で6,600ドルになります。そこから4週間分の車のレンタル費1,360ドルとガソリン代2,200ドルを引くと、3,040ドルが彼女の取り分となる計算になります。

シリコンバレーからサンフランシスコのダウンタウンまで乗せてくれた57歳の運転手サリームさんは、アゼルバイジャンから2ヶ月前に移住してきたばかりで、アゼルバイジャン語、ペルシャ語、ロシア語、トルコ語は使えるが、英語はまだ話せないと言います。YouTubeで英語を勉強中だと片言の英語で説明してくれ、安全にダウンタウンのホテルまで送ってくれました。 

ウーバーに乗ることによって、米国は海外から移住してきた多様な人々によって社会が回っている国であることを再認識しました。とても貴重な体験でした。