米国への入国者は回復傾向

今週ほぼ2年4ヶ月ぶりに仕事で米国を訪れる機会を得ました。搭乗した全日空の成田発サンフランシスコ行きの便のエコノミークラスはほぼ満席。フライトアテンダントに聞くと、この便が混み始めたのはこの2週間で、今回の乗客の約8割は成田経由で米国に向かう他のアジアからのフライトの乗り継ぎ客だと言います。その方によると、このところ他のアジアの国々の乗客が増えてきたとのことです。

調べてみると米国の全ての空港では4月25日までの1週間で、毎日平均2,126,254人が空港のセキュリティのチェックポイントを通過しています。2019年の同じ週を見ると毎日平均2,348,655人ですので、米国ではコロナ前の91%のレベルまで回復していることになります(2020年の同じ週は毎日平均112,872人に落ち込んでいました)。

久しぶりに米国に入国して、頭を米国(英語)モードに切り替えなければならないことを思い出しました。まず、日本人の「遠慮」という謙虚さを捨てねばなりません。この社会では遠慮するとやっていけないからです。

ダウンタウンでの意外な経験

サンフランシスコのダウンタウンを歩くと、ほとんどの通行人がマスクをしていないことに気づきます。本来ですとこれは普通のことなのですが、マスク着用を余儀なくされた過去2年間の生活に慣れた日本から来ると逆に不思議だと感じてしまいます。一方で、その後訪れたチャイナタウンでは、ほぼ全てのアジア人がマスクを着用しており、安心しました。

米国ではコロナ禍でホームレス人口が増えたと言われています。確かに街を歩いていると、ホームレスと思われる方々が目に入ります。宿泊しているホテルの外を歩いていると、(ホームレスの方かどうかはわかりませんが)突然見知らぬ中年男性から、「タバコ持ってないか?小銭があったらくれないか?」と話しかけられました。私は原則タバコを吸いませんし、到着したばかりで小額紙幣も小銭も持っていなかったので「申し訳ないけど、持っていません」と答えたのですが、普通の身なりをしている方から小銭を求められたのは初めての経験です。

州法が変わり、万引き多発のサンフランシスコ事情

久しぶりの米国なので、全てが新鮮で、色々なことに目が留まります。米ドラッグストア大手のウォルグリーンに入ったと時のことです。商品が並んでいる棚に特定の商品が置いてあるエリアだけ鍵のかかったケースに入っていることに気づきました。よく見てみると、1個10ドル以上のものだけが入っており、店員にお願いしないと取り出せないようになっているのです。不思議に思ってその場にいた店員に聞いてみると、この数年、万引きが多発しているため、対策として高価な商品は鍵をかけたケースに入れているのだと言います。

そのことについてビジネスミーティングで会った友人に聞くと、サンフランシスコではカリフォルニア州の州法によって950ドル未満の万引きが重罪から軽犯罪に格下げされ、警察には逮捕されないため、万引きの件数が増えているというのです。

NBCニュースによると、実際にサンフランシスコのウォルグリーンとCVSでは全米平均より万引きが増えているのだと言います。2021年10月19日付のウォール・ストリートジャーナルによると、ウォルグリーンはサンフランシスコの店舗であまりにも万引きが増えたため、5つの店舗を閉じ22店舗に減らしたとのことです。ベイエリアにある155の店舗のうちサンフランシスコにある12の店舗がエリアの万引きの26%を占めたそうです。なぜこのようなことになったのかを調べてみると、2014年にカリフォルニア州の州民投票で通過したプロポジション47と呼ばれる法案に端を発しているといいます。

もちろん米国も完璧な国ではありません。日本にはないような様々な社会的な問題を抱えているのは間違いありません。これは今回初めて感じたことでもなく、米国に9年ほど住んだ経験から知っていることでした。ただ、コロナ禍でバーチャルでしか日本以外のことを体感することができなかった2年ちょっとで忘れていた経験でした。30年来の付き合いのある米国人に、「This is so America! (これって本当に米国的だね) 」と言うと、「Of course(もちろん!)」という返事が返ってきました。

この国も困ったものだなと考えながら、次の瞬間サンフランシスコでテクノロジー業界の関係者とのミーティングで彼らの話を聞き始めると、上記で述べた米国社会のネガティブな側面のことを忘れさせてくれるような米国の凄さを改めて感じた次第です。

>> >>【後編】に続く