米ドル/円 日足

週間予想レンジ:120.00~123.60

メインストラテジー:押し目買い

・歴史的な円全面安
・円は独歩安でも限界
・「14連陽」で一服か?

【図表1】米ドル/円(日足) 
出所:筆者作成

アナリシス:

先週の米ドル/円相場は大幅続伸し、週足では連続3週の大陽線をもって2015年12月以来の高値を更新した。円は米ドルのみではなく、対ユーロなど主要通貨だけでなく、対南アフリカランドなどの新興国通貨に対しても大幅安となり、独歩安の様子を露呈した。

地政学リスクに起点する「有事の米ドル高」の側面があったものの、米ドル/円の高値更新により、米利上げ周期入りに伴って、円買いポジションの総撤退や新規円売りポジションの急増が推測される。

一番わかりやすい理屈としては、ロシアによるウクライナ侵攻で地政学リスクが急上昇したことで世界株式市場の急落があったにもかかわらず、米ドル/円は底堅く推移し、円はかつてのように「リスク回避先」として評価される痕跡が全くと言っていいほどなかった。そのため、米利上げ周期入りにおける円売りは一番行われやすく、また円売りは安心感に繋がるため、円売りのモメンタムの加速をもたらした。

テクニカル上の視点も然り、である。3週間前の高値更新は、年初来に形成された「上昇トライアングル」の上放れを果たしたため、円売り加速のサインと化し、連騰をもたらした。円買いポジションの踏み上げも含め、モメンタムの増強が値幅を拡大させ、また値幅の拡大で更なる新規円売りを呼び、また円買いポジションの踏み上げに繋がるため、連鎖的な円売りムードを作り上げた。連続3週間の大幅円安は、「行き過ぎ」だったからこそ、さらなる「行き過ぎ」をもたらし、また市場センチメントの偏りに繋がっている。

言ってみれば、短期スパンにおける円売り、市場センチメントの円売り一辺倒、また円安ターゲットの大幅引き上げ(レートの引き上げ)が相次ぐ中、少なくとも円独歩安の限界が近づいてきたのではないかと思う。日足では、3月7日から24日まで、ほぼ「1連陽」を達成しただけに、上昇一服、また高値圏での調整なしではモメンタムの維持が難しいだろう。この意味合いにおいて、2015年12月高値の123.60円前後が当面の上値ターゲットであり、また限界でもあるとみている。

要するに、円安の継続に異議はないが、連続した円売りには限界があり、またすでに「オーバー」した値動きに注意を払う必要がある。2015年高値の125.86円の打診やブレイクがこれから達成されるとみているが、一直線な打診やブレイクに懐疑的な見方も残しておきたい。機関投資家を含め、猫も杓子も円安で、またつい最近まで円高を見込んでいた予測筋の君子豹変があったからこそ、少なくとも短期スパンにおける円安進行の一服を想定しておきたい。

とはいえ、調整があってもあくまで高値圏に留まり、また120円心理大台が一転して当面の支持ゾーンになるとみなされる。中長期スパンでは、2015年高値のブレイクが規定路線である以上、これから130~135円といった上値余地を拡大し、息の長い円安トレンドの形成に繋がるだろう。年内上値ターゲットの上方修正は、これからのスピード調整を確認してから再提示したい。

豪ドル/円 日足  

週間予想レンジ:90.00~94.00

メインストラテジー:押し目買い

・高値追いでも一旦限界へ
・豪ドル高より円安が鮮明
・週足の「8連陽」に注目

【図表2】豪ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週大幅続伸し、1月末から8週連続の上昇を果たし、92円関門をトライした。豪ドルの強気変動は間違いなく豪ドル対米ドルの強さに由来するが、先週豪ドル対米ドルは一旦調整が行われたにもかかわらず、豪ドル/円の続伸が明らかに米ドル/円の大幅続伸につられた側面が大きく、これからも上昇余地を拡大するだろう。

もっとも、豪ドルの強気変動には、見逃せない2つ決定的なポイントがある。1つは地政学リスクの強まりで原油、穀物をはじめとした商品相場の急騰。もう1つはユーロ全面安がもたらした豪ドル対ユーロの急騰だ。その構造は先週も継続された。また一時みられたユーロ対豪ドルのスピード調整が完了されたところで再度豪ドルの優位性が証明され、豪ドル対円の値幅拡大に繋がった。

90円心理大台を乗せて以来、豪ドル/円は事実上新たな変動範囲に入り、94円前半まで大した抵抗が見つからない環境にあるだろう。一方、週足では連続8週間の上昇自体が「行き過ぎ」のサインと見なされ、また日足でも「8連陽」が確認され、米ドル/円の上昇一服の可能性に鑑み、豪ドル/円が今週はまず高値圏で調整が先行されてもおかしくないだろう。

とはいえ、このような見方自体は逆張りの根拠にはならない。テクニカル上の「行き過ぎ」に関する判断自体が確実なものではなく、また円売りの一環として捉える場合、円の独歩安が背景にあるため、円売りが行き過ぎたからこそ、さらに加速され、いわゆるパニック的な円売りがみられる可能性もある。そのため、あくまで高値圏におけるスピード調整と想定し、高値追いに慎重なスタンスを取りながらも、ブルトレンド自体の継続に異議はない。

さらに、日足における「8連陽」、高値圏における2日程度の保ちあいを経て再度高値更新を図り、事実上の「9連陽」や「13連陽」になる可能性も大きい。この意味合いにおいて、3月24日安値の90.50円の割り込みなしでは本格的な調整が見られない上、本格的な調整があっても当面90円心理関門前後に留まるだろう。言い換えれば、豪ドル高/円安のトレンドが行き過ぎの疑いが濃厚であるからこそ、安易な修正も見られないだろう。

その上、94円台の打診があっても自然ななりゆきであり、円売り一辺倒な市場センチメントに鑑み、円売りの加速が円売りを呼ぶような展開が当面続く可能性も大きい。この場合、95円台の打診があっても許容範囲内の出来事であり、日足における明白な頭打ちのサインの点灯は、さらなる高値更新なしでは見られない可能性を覚悟しておきたい。

言い換えれば、単純にテクニカル視点のみで豪ドル高/円安の「行き過ぎ」を図る自体が、性急な判断に繋がる恐れが大きいため、トレンド・フォローの視点において、安易な上値測定は避けたい。

長期スパンにおける視点としては、度々強調してきたように、米ドル/円と同様、強気ラリーの継続が有力視される。2020年のコロナショック後の安値を起点とした大型強気変動は、2021年5月から高値圏における大型レンジを形成してきたが、それはあくまで調整子波と数えるため、先々週の続伸で大型上昇波への復帰を示唆した。

この場合、95円大台乗せはもちろん、100円大台の打診も長期ではなく、中期スパンのターゲットとして浮上してくるだろう。豪ドル/円の上値追いは、仮にスピード調整が先行される場合、一層健全化される可能性が高い。