欧州懸念の上に米国と中国の経済失速が鮮明になってきています。米国では失望の雇用統計が発表されましたが、中国でも製造業景況指数(PMI)が予想よりも悪い数字で出てきています。まず、6月1日にHSBCが発表した5月の中国PMI確報値は48.4で4月の49.3から低下しました。ちなみに5月24日に発表されていた速報値は48.7でしたがこれも下回っています。
また、中国物流購買連合会(CFLP)と国家統計局が発表した5月の中国公式PMIは50.4となり、4月の53.3から大きく低下した上、予想の51.5も下回る結果となりました。PMIは50を下回ると製造業の活動が前月より縮小したことを意味しますが、どちらかといえばHSBCの数字は中小企業中心の数字で景気に敏感な数字であり、また信頼性も高く、中国の製造業の活動は縮小傾向にあることが鮮明となっています。
ただ、株式市場を見てみると、中国本土株の動きは先に下落してきた分、調整も緩やかであり、市況解説を見ていると、ここまで景気が悪化してきたのであれば中国政府が金融緩和を進めるはずであり、インフレが悪化しなければ6月にも利下げが行われる可能性もある、といったように、比較的強気な見方が多いように思います。
一方、香港市場は欧米市場の影響を色濃く受けますので弱気な相場見通しが多いように感じられ、実際のところ株価も中国本土市場に比べて弱含みの展開となっています。ちなみに米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の幹部は、中国は金融緩和を実施する余地が多分にあるためにハードランディングはしない。しかし、2008年のような大型の景気対策は実施せず、目標を絞った政策を打ち出す可能性が高いとの見解を発表しています。
そして実際のところ、国務院は7大戦略的新興産業(省エネ(エネルギー効率)・環境、新エネルギー、バイオ、次世代情報技術、最先端機械設備、新エネルギー自動車、新素材)を支援する方針を改めて強調しています。その中でも原子力、風力、太陽光は発展計画の焦点になるとも言及しています。これらの7大戦略的新興産業の支援策は今後、次々と打ち出されてくるとは思います。
もう1つプラスのニュースとしては、中国証券監督管理委員会と中国保険業監督管理委員会の打ち合わせが進んでいるようで、今後、保険機関の株式投資に向ける金額が増えていく可能性があると報じられていることがあります。しかし、当面は政策待ちの局面が続くことになると考えられます。