直近のJ-REIT価格動向
2月下旬以降のJ-REIT価格は、株式市場と比較すれば堅調な推移と言えるだろう。株式市場は日経平均株価が3月8日に節目となる25,000円を割り込む等、年初来安値を更新する動きとなっている。
一方で東証REIT指数は1月中旬に急落していたこともあり、3月9日に1,850ポイントを割り込んでいるが1月中旬以降の1,850ポイントを挟んだ動きが続いている。
ロシアのウクライナ侵攻前であった2月22日と3月9日を比較すると、日経平均株価の6.6%下落に対し、東証REIT指数は1.4%下落となっている。J-REIT市場に対しては「いまのところ」影響が比較的及んでいない。
この理由としてウクライナ侵攻後に米国の長期金利が低下していることが挙げられる。米国の10年債利回りは、2月11日に2.0%を超えるなど上昇基調が続いていたが、2月下旬に低下に転じた。
また米連邦準備制度理事会(FRB)は3月の利上げを予定しているが、上げ幅は0.25%に収まる見込みとなり、ウクライナ侵攻前に市場が想定していた0.5%と比較すれば小幅となりそうだ。
年初からのJ-REIT価格下落は、米国の長期金利上昇と今後の金利上昇幅に対する懸念が要因となっていた。金利上昇懸念が弱くなったことで、J-REIT価格は厳しい市場環境の中でも比較的堅調に推移していると考えられる。
今後のJ-REIT価格への影響
ウクライナ侵攻によるJ-REIT価格への影響は、終結までにどのような経過を辿るかによっても大きく変化し未知数な点も多いが、現時点で考えられる悲観的及び楽観的なシナリオが以下の通りである。
まず悲観的なシナリオは、J-REIT価格の大幅な下落が起きるというものだ。ウクライナ侵攻により米国の物価上昇率は、さらに高くなる懸念が生じている。特に米国での生活に必須なガソリンを含むエネルギー価格の大幅な上昇が避けらない状況だ。
FRBを含む中央銀行の使命は、物価の安定を最大の義務としている。従って物価上昇率が高い状態が続けば、大幅な金利引き上げを行う可能性も生じている。J-REIT価格は、金利上昇により大幅に下落する可能性が否定できないと考えられる。
一方で楽観的なシナリオは、J-REIT価格への影響は少ないというものだ。大幅な金利上昇は、先行きも含め景気悪化を導くことになる。
FBRの利上げは短期金利に対する政策であり、景気悪化懸念が強まれば短期金利の上昇と比較して長期金利が上昇しないという金利のフラット化や長短金利の逆転が起きることも想定される。このような状況になれば、J-REIT価格に対する悪影響は、一定程度で収まると考えられる。
但し、直近でのJ-REIT価格急落となった2020年3月のコロナショックを考慮すると、現時点ではJ-REIT投資に対し極めて慎重な姿勢が必要だと考えられる。楽観的なシナリオであっても、J-REIT価格の当面の上値余地は少ないと考えられる。
コロナショック時にも、株式市場が先行して下落しJ-REIT価格は2月下旬から急落していたためだ。また、「すでに第三次世界大戦が始まっていて米国は気がつくのが遅れている可能性がある」、と指摘している米国の投資家もいる。
さらにこれまで私はJ-REIT価格の大幅な急落があれば、投資好機というスタンスであったが、リーマンショックに匹敵するような大幅な経済情勢の悪化懸念もある。従って5年を超える長期投資を考慮する場合を除けば、急落したとしても慎重な投資姿勢を維持すべきと考えている。