日本の人口は2008年をピークに減少に転じていますが、少子高齢化により人口減が加速すると見込まれています。年間死亡数は第二次世界大戦直後である1947年に114万人を記録しましたが、その後は医学や医療の進歩および公衆衛生の向上などで1966年には67万人まで減少しました。ただ、その後は高齢化を反映して緩やかな増加傾向に転じ、2003年に100万人を突破、2019年には138万人まで増加しています。今後も毎年5万人程度増加し、2040年には168万人に達すると試算されています。需要拡大で葬儀業界が注目されそうです。

【図表1】死亡数の推移
 

葬儀業界は、一般的に人が亡くなった際に葬儀を執り行い、火葬から寺社供養までのプロセスに関わる企業で構成されています。葬儀は地域密着型のビジネスのため、多くの企業が特定エリアで事業展開しています。中小零細事業者が大多数を占め、業界最大手の企業でも市場シェアは3%程度に過ぎません。家族構成の変化などで葬儀の簡素化が進んでいることから、葬儀単価は漸減傾向となっています。市場規模はここ数年1.7~1.8兆円程度で推移してきました。新型コロナウイルスの影響で2020年は1.5兆円程度まで落ち込みましたが、コロナ収束後は市場規模が落ち込む前の水準程度まで回復し、その後は多死社会を背景とした葬儀件数の増加で緩やかながらも拡大していくと見込まれます。


葬儀関連銘柄

 【図表2】葬儀関連銘柄の株価(1月19日終値)等と2020年末からの騰落率
出所:株式会社QUICK 作成

 

ティア(2485)

創業当時より一貫して葬儀価格の完全開示に努めており、独自の会員制度「ティアの会」を中心に、明瞭な価格体系による葬儀を提供しています。名古屋を地盤に葬儀会館「ティア」を中部、関東、関西で132店舗(2021年9月末時点)展開し、会館での葬儀・法要の請負のほか寺院や個人宅、公共の場所などでの葬儀・法要も手掛けています。葬儀需要の高まりを背景に、直径3キロメートルの範囲内に多店舗展開する「ドミナント戦略」で、中長期的には260店舗体制の実現を目指しており業績拡大が期待されます。

きずなホールディングス(7086)

創業時から家族葬(家族・親族やごく親しい友人、知人のみで執り行う葬儀)に特化した葬儀会社で、「家族葬のファミーユ」を中心とした直営ホールで葬儀を施行しています。また、直営エリア以外では、提携葬儀社への葬儀委託や、ネット集客による葬儀仲介を実施しています。独自のオーダーメイド型葬儀で「参列者:少」×「葬儀費用:中」という空白地帯を開拓しており、葬儀の簡素化が進行しても高付加価値・高収益の確保を目指しています。

燦ホールディングス(9628)

葬儀専門会社大手の公益社を筆頭に、タルイ、葬仙の葬儀会社3社に加えて、葬祭サービスに必要な警備や清掃などを提供するエクセル・サポート・サービス、ライフエンディングサービスのポータルサイトを運営するライフフォワードを傘下に抱えています。人口が集中する首都圏、近畿圏を中心に年間1万件以上の葬儀を施行するほか、社葬・お別れの会で業界トップクラスの実績があり、関西の社葬では圧倒的なシェアを誇っています。

アスカネット(2438)

葬儀演出に必要なコンテンツ制作からシステム機器・サプライ用品販売を手がけています。遺影写真は加工前写真を元に遺族の要望に沿って加工し、葬儀葬祭関連会社に提供しています。遺影加工は年間36万枚で業界トップを誇り、葬祭ビジネスのDX化(葬テック)サービスである「tsunagoo(つなぐ)」を推進しています。