先週、8年ぶりに日本の長期ソブリン格付けがAAから AA-に引き下げられたことはサプライズとして伝わり、直後には市場は大きく反応しました。
財政不安を指摘されているスペインがAAと日本より1ランク上となり、PIIGSのイタリアが一段下のA+、アイルランドがA、ポルトガルがA-と続く位置付けです。AA-は中国、台湾、サウジアラビアと同格です。

なぜ今頃・・・?と感じている方も多いのではないでしょうか。
そもそもPIIGSによるユーロ信用不安とは債務問題の質が異なるとは言われています。事実、日本国債は9割以上を国内資金で消化しており、対外債務に苦しみ、かつ統一通貨ユーロのために身動きがとれないPIIGSとは同一に扱うことはできないと言えます。

今回の格付けは米大手格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によるもので、他の大手格付け会社のムーディーズやフィッチは追随していません。長期格付けの変化の可能性を示唆するアウトルックは「安定的」としており、信用度は安定的に推移するという判断をしていますが、長期格付けの格下げにより、
もたつく日本の政権の財政運営に対して喝を入れたといったところでしょうか。
さて、この「格付け」ですが、格付け機関は上述した米国の会社の他、日本にも格付投資情報センター(R&I)や日本格付研究所(JCR)などがあります。いずれも事業会社や金融機関の債券、債務のほか、保険財務力やファンドなど様々な分野について分析・格付けが行われています。
基本的には発行体からの依頼に基づきますが、「ソブリン格付け」については発行体(今回の場合、日本国)が依頼したわけではない非依頼型の格付けです。
ソブリン格付けというのは、外国の政府や政府機関に対する融資のリスク(ソブリンリスク)についての格付けで、「融資のリスク」というのは、つまり外国の国家が発行体となって発行する国債のリスクといえます。
「自国通貨建て格付け」と「外貨建て格付け」がありそれぞれに「長期格付け」「長期格付けに対するアウトルック」「短期格付け」が提示されます。

自国通貨建てと外貨建てとの区別をするのは、政府には課税権限、自国通貨の発行権限があるためです。例えば財務不安によって通貨安が進んでも、自国通貨建てであれば通貨をたくさん発行すれば対応可能なので、自国通貨建て債務の返済能力の方が高いというわけです。
なお、今回の日本の格下げは外貨建て・自国通貨建てともに長期ソブリン格付けの格下げとなりました。短期は据え置かれています。

ソブリン格付けの場合、事業会社などに対するそれとは影響力が全く異なります。
場合によっては通貨危機を誘発する可能性もあり、為替・金利政策、金融システムから産業構造に至るまで国家運営に対して大きく影響することが考えられます。

格付け機関の対応については判断の偏りやスピードについて賛否両論ありますが、
それでも市場は注目し、一時的にしろ大きく反応します。

発信元が一民間企業であることを考えると、すごい影響力ですよね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員